大人になれない私たちは

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「あ……そ、そうだよねー……」 気まずくて苦笑いを浮かべる私は、休日だと言うのに制服だ。雨宮くんは当たり前に私服。(当たり前だけど、お洒落ですごくかっこいい) 「……そういう趣味でもあんの?」 「ち、ちがうよ!?」 弁明させてほしい。これでも一応、着替えようとしたのだ。けれども、恋愛経験が希薄で、さらに雨宮くんのような一軍男子と休日・二人きりというシチュエーションが難解すぎた私は、私服なのに何を着ていいのかわからなくて、悩みに悩んだ末、制服という選択肢にした。 「趣味のことをとやかく言わねえけど、シワになるから着替えた方がいいと思う」 「はい……」 制服嗜好と思われてしまったけれど、致し方ない。 そんな一悶着があって、雨宮くんを家に招いた。「お邪魔します」と言い、靴を器用に揃えて脱いでいたのは意外だった。 「部屋どこ?」 「えっと、こっちです……」 他に誰もいない家の中は静かで冷たい。そして歩幅の大きな足音が響く様は私に非日常を思わせた。 「……着替えてきます。お菓子とか、お茶とかどうかな」 煩い心臓を利き手で押さえながら、ドアの先を指さす。 雨宮くんは私の指先を見つめ、口を開いた。 「のんびりする余裕あんの?」 彼は不敵に笑い、共に放たれた艶めかしい台詞に私はまた赤面した。 パッと顔を反らすと噛み殺された笑い声が聞こえてきた。強者と弱者、捕食者と餌、そんな優劣を骨の髄まで理解させられて、それがたまらなく恥ずかしくて自分の部屋なのに逃げるように後にした。
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