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はやく解放して欲しい。離れて欲しい。
そんなことばかり願っていると、額にキスが落ちた。許してもらえると思った。さっきよりも近い位置に国宝級のお顔が現れ、ふいうつときめきに心臓が慌てる。
「璃凪が俺以外を受け入れたら、俺嫉妬で死ぬから、その時は一緒に死んで」
私は雨宮冬稀のことを知ったつもりだった。しかし、こんな巫山戯た要請を嬉々として告げる男だなんて。
「なにを……」
と、言いかけた声は、指先が敏感な場所を触れるから、喘ぎ声に変わる。
その目が苦手だった。
私の全てを見透かすようなその目が、私を見下ろしている。
「……っ、見ないで……」
「あほか。何回も全部見たわ」
「〜〜〜〜……!あ、んまし、見ないで」
「見なくてもいいけど、見ないと入れらんないけど、璃凪が自分でしてくれんの?」
それは……無理に決まってる。
黙りこくると目に涙が溜まった。溜まったそれは瞬きをするとポロッと流れてしまって。
「良い顔」
そんな私を見て雨宮くんはいつも楽しそうにする。
良い顔なはずも無いし、良い声なはずも無い。
雨宮くんが触れるその間、私は慣れ親しんだ玄関の天井を初めて見た。
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