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「経験がないんだよ、俺も。ハジメテっていうのに」
やっと真意に触れる。けれども、謎は残される。
だったら、他の人で十分満たされるはずだ。
私よりもずっとずっと可愛くて、私よりスタイルがいい女子だって、雨宮冬稀を求める女子の方が圧倒的に多いっていうのに、運悪く、雨宮くんは少数派の私を引き当てたのだ。
どう抗おう。
けれども雨宮くんが、その完成された造形美が、私だけのために微笑むから。圧倒的なオーラを放つ美貌を前に、口答えなど出来るはずがない。
──……「だから、あんたに興味がある」
雨宮くんが顔を近づける。私は拒否することも叶わず、俯くことも勿体ないきがして、じっと静止していた。
すりっとお互いの鼻先が触れる音がした。繋がれた指が動いて、神経が、 そちらへ移動する。
「真面目なあんたが、俺を求める顔が見たい」
体が熱くて、息苦しくて、今にも意識を失いそうだ。いや、失えた方が幸せなのかもしれない。
「どんな声を聞かせんのか、考えただけでクるわ」
空いている手が私の顔の輪郭を撫で、滑るように顎まで移動する。そして彼は慣れた手つきで唇をこじ開ける。逸らせない。
この瞳に見つめられて、この声で囁かれて、彼のことを拒絶できる女子がこの世に何人いるのだろうか。
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