幕間<レイガ・フォレスト公爵の憂鬱①>

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 フォレスト公爵は、頭上に、大きくて重い石が、がんっと落ちて来たような感覚に襲われた。  十四歳の時に。天使に出会った、と思った。  フォレスト公爵は、幼い頃から人と関わることが苦手だった。  両親は、「家のために」結婚した人達だったし、実の母親とは、幼い頃に別れて以来、会っていなかった。  フォレストの館では、沢山の使用人達はいたし、生活には不自由はなかったけれど、父は愛人がいる公都の邸宅に入り浸りで、自分と義母がする本宅にはほとんど帰って来なかった。  義母も愛のない結婚をしたとは言え、血の繋がらない継子の自分と残されて。  他人行儀に、接するしかなかったのだろう。  そんな環境に育った自分に、他の人間達がどんな思いを抱き、どんな風に見ていたのか。  察するには、フォレスト公爵は頭を良すぎた。
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