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そろそろフォレスト公爵家も、王家の方も、「また婚姻を」と考えているのは、わかっていた。
だから。父に頼んで、アーマリアと婚姻できるようにしてもらった。
愛人の男性がいる公都の館に入り浸り、領地の館にはほとんど帰って来なかった父とはほぼ交流はなかったが、それでも「家」のことは無視できなかったようで、フォレスト公爵の申し出に驚きはしたものの、『悪くはないな』と頷くと、すぐさまアーマリアとの縁組を申し込んでくれたのだ。
予想通り王家の方も了承してくれて、フォレスト公爵は幸せだった。
自分を顧みない父と。義務のように自分に接する義母と。
温かい家庭を知らない自分でも、天使のような妻を得て、幸せになれる、と思っていた。
そうして。
フォレスト公爵は、心の底から自分は妻を大切にしている、とも思っていたのだ。
「旦那様にとってはそうでも、奥様にとってはそうでなかったのかもしれません」
何時だって嘘は言わない黒髪の従者は、そう告げた。
その瞬間。
フォレスト公爵は、本当に地獄の底を見たような気がしたのだった。
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