光明へと降る君へ

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 畳を指で弄りながら、膝の裏の皮膚をかく。痒い。風呂は、カビが生えて湯に浸かるどころではない。シャンプーや、リンス、ボディーソープなどはない。だから俺は、2人が行為の時に稀に使うローションで身体を洗い、冷水で清めている。まあ、臭い。自分でも臭う。獣くささというのか、まあ、臭う。ローションは無味無臭で水に濡らした手で触るとよく滑り、時間が経つと泡立ち、滑りが悪くなる。2人にバレないように、2日に1度のペースで拝借している。だから、身体が痒い。掻きむしれば掻きむしるほど、僅かな血が出てまた服が茶色く染まる。  腹が鳴る。もう何度も、初めは暇つぶしに数えていたが、それももうやめた。よく、寝る前に寝付けないときは羊を数えるのと同じ原理だ。だが俺には眠気は来ない。やってくるのは、壮絶な空腹感だ。腹が臍から捻れるような痛みが走る。畳が、畳の端が解けてきた。それらを引っ張り、口元に運ぶ。黄色い草を食む。汗の味がする。何度も噛む。腹の虫は止まらない。畳を掻きむしる。何本も採取できたそれらを口に運ぶ。不味いも美味いもない。ただ、解けた畳の草を口ヘ運ぶ。  腹の虫がいくらか泣き喚いた後で、ようやく2人の行為が終わる。部屋がパッと光る。(いかづち)のように、四角い蛍光灯が光る。俺は目を細めて、カーテンの後ろに隠れる。膝の裏が痒い。いつもより痒い。瘡蓋も痒いから剥がす。畳の上に、ぽろぽろ皮脂が落ちる。
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