光明へと降る君へ

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 実父は、血の繋がらない再婚したばかりの、(よわい)は確か29と言っていた気がする。女を、女の髪を撫でてから、プリン柄になっている長髪の金髪に指を滑らせながら、何かを囁いている。おそらく愛の言葉である。女は高く笑って、実父と共に立ち上がる。2人は下着を纏い、余所行きの服を着て、このオンボロアパートから出ていった。軋んだ扉が閉まる音とともに、俺はカーテンの隙間から瞳を覗かせる。いなくなった。2人は消えた。外へ出た。俺もカーテンの隙間から出る。布団の隅に零れ落ちたローションをひったくって、シャワーを浴びる。膝の裏が染みる。血が滲んでいる。まだ紅い。血が落ちる。床に落ちる。シャワーは冷たい。この家にはガスが通っているにも関わらず、お湯を使わせてもらえない。まだ8月だから耐えられる。けど真冬になったら。凍死するかもしれない。そうしたら、そうしたら、いつか優しい児童相談所の人が家にやってきて、おいでと手を引いてくれる。そのまま施設に引き取られて、温かなシャワーを浴びることができる。ボディーソープで身体を清められる。  そんな常日頃している妄想の中に、綺麗な俺がいる。綺麗に整えられた前髪と、切りっぱなしの襟足ではない。美容室に連れて行ってもらえないから、前髪が長くてうっとおしい。
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