捜査一課第5班

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 一方の私といえば、姉からしてみれば「脳筋」と呼ばれるほどの馬鹿力を駆使して、柔道部では個人の大会で全国大会4位の成績をおさめ、警察学校へ入学。自分より遥かに体格のいい男性学生や先輩と組手を重ね、稽古を重ね、ほんのちょっとのことでは倒れることもない女になった。  現在、捜査一課第5班の副長を任命されている。数少ない女性警察官だ。  ランジェリーには、予め生理の周期を予測しておりものシートを付けていたから、血は下着に付着していない。安堵した。欲しいわけではない、必要性も感じないが、貰いもののため、汚すことは避けたかった。  朝食はいたってシンプルなものを好む。朝からフライパンなどを使うのは疲れるので、冷凍ブロッコリーを解凍し、何もつけずに口へ運ぶ。昨日、炊きおきして冷凍していた十六穀米を丸くしたものを電子レンジで、表、裏、2分ほど温め、ラップをいそいそと剥ぎながら、紫色に染まった白米と、僅かばかり顔を覗かせる黒豆と共に口へ運ぶ。最後に、口寂しくなったせいか電子ケトルで湯を沸かし、春雨スープを啜る。  歯を念入りに磨いて、着替えにとりかかる。洗濯し過ぎてくたびれた白いブラウスの、襟を申し訳なさ程度に立てる。第1ボタンは開けたままジャケットに腕を通す。5月の初旬。まだまだ、朝や夕方は冷え込む。日中はまるで夏日のような日もありながら、雨が降ると途端に身体が芯から冷えるような気がする。黒いレギンスを履き、黒のソックスを履く。まるで、葬式に行くような装いだ。まあ、あながち的外れな比喩ではないのだが。  黒いパンプスーーヒールは3センチほどを履き、玄関でふう、と息をつく。ドアに磁石で貼り付けた百均の鏡で顔を見つめる。白く、血の気のない色をしている自身の顔。やはり、貧血気味のようだ。栞は、お守り程度に持っている鉄分のサプリを、水とともに流し込む。まあ、これを飲んでおけば倒れるほどの目眩にもならないだろう。そう確信して、玄関から外へ出た。  初夏の日差しが、瞳の中へ突き刺すような痛みとともに、栞は軋むアパートの階段を下りた。
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