6人が本棚に入れています
本棚に追加
「染矢副長。おはようございます」
「ああ。おはよう。守本」
「うす」、と小さく小生意気な返事をしてこの童顔爽やか警察官ーー守本が会議室の席を取っておいてくれた。わたしのために、朝一番で会議室に直行し、最前列・最中央の席に自分のジャケットを被せて、私のためにわざわざ朝早くから気を使ってくれている。この組織の風土とは真反対な女性への気遣い。警視総監ら、50代くらいのおじさんたちも、このくらいの優しさをたまにでいいから見せてくれてもいいのでは? と、守本の日々の言動を見て思う。
まあ、しょうがないかー。男畑だものね、ここは。
私みたいに、女で、34歳のおばさんくらいしか、女性警察官はいないものね。たまあに若い女の子が、警察署の受付窓口の対応をしているのを見るくらいだもの。
時刻は朝の8時30分に近づいてきた。ぞろぞろと、会議室の左右の入口から警察官が入出してくる。その数、ざっとみて40人近く。程なくして、皆席に着いた。その直後、会議室の正面のドアがピシャリと開く。パッ、と部屋の空気の温度が下がった。緊張感が走る。何度も経験しても、この瞬間ばかりは警察組織への畏敬というか、神聖さというのを感じてしまう。軍隊のような、挨拶と礼儀を重んじる姿勢。今どき珍しい、圧迫的なほどの上下関係もハッキリしていて、口で伝わらないなら時には力ずくでなんてこともしょっちゅう。
最初のコメントを投稿しよう!