捜査一課第5班

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「起立! 礼!」 「「「おはようございます!」」」  警視総監の傍らの男が号令をかける。周りの男たちに合わせて、椅子から起立し大きな声で挨拶をする。柔道部でよかった。腹から声出せと言われて育ち、女のくせして声がデカいと初対面の人にもよく言われる。もう、お淑やかな、清らかな女性の話し方はできまいと諦めている。  一同、礼をしてから、着席する。パイプ椅子が、ギタギタと音を引く。  警視総監が、沈黙の後に口を重々しく開いた。 「今日で何日目だ。このヤマは」  ぐ、と隣の席の守本が喉を鳴らした音を耳に拾った。あら、こわがってる? 「守本答えてみろ。何日目だ」  あら、かわいそう。ご指名ね。  私ってつくづく、優しくない女だと思う。守本は、上擦った声で、 「61日目です」  と息を切らしながら答えた。 「うむ。そうだな。このヤマが発覚してから、およそ2ヶ月の月日が流れたといえよう」  警視総監は、ぐるりとその一重の硝子みたいな目で、会議室に座る面々を見渡している。直後、 「2ヶ月を経過してもヤマへの目撃者も、ホシの情報も1つも上がらないなど。過去にあったか? オイ、染矢」  うっわ、すっごい皆の視線が背中に突き刺さってる気がする。  わたしは、背筋をぴしりと立てて、つま先に力を入れて答える。 「いいえ。ありません。過去、2ヶ月を経過しても証拠の塵1つも見つけられなかったことなど、捜査一課において前代未聞の体験です」 「だよなあ。聞き込み班のやつらはどうなってる」  嗄れた額を手の甲で払いながら、警視総監は苦々しく呟く。まるで、苦虫を噛み締めたような顔をしている。
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