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7 あきらめない
タクミと涙の夜を過ごした翌日、お互いにヒドい顔で目覚めた。こんな顔で出勤するとかヤバない?!ってお互いに笑うしかなかった。
「目の冷やしが甘かったわ。こんな腫れてもうて…アイメイクでもどうにもならんレベルや、これ。ハハハ!今日は片目に眼帯して眼鏡掛けて出勤しよ。タクミは前髪降ろして眼鏡掛けて出勤したら?」
「あー、くそっ。休みたいなー。でも俺休んだら後輩1人ぼっちになるから休まれへん。」
「私もー。係長も後輩も休みやから休まれへん。」
「お互い今日・明日頑張ろ!そしたら夏休みや!」
2日間、私は週明けの3日間夏休みを取得するので、係長と後輩への引き継ぎを完璧にするべく、仕事に邁進した。タクミの検査結果を頭から振り払うのにちょうど良かった。
昨日に買い物も済ませていたので、久々に真っ直ぐ家に帰る。定時で帰るとこんな明るいんだな。カチャっと家の鍵を開けると、玄関には既にタクミの靴があった。
「ただいまー。」
「マナ、お帰り。今炊飯器スイッチ入れたところやから。」
「ありがとう。昨日買い置きしてた食材があるから今からおかず作るわ。タクミは先にシャワー浴びる?」
「いや、ちょっとパソコンで夕飯の前に調べものさせてもらうわ。」
「分かった。夕飯用意できたら声掛けるわ。」
鶏の手羽元を液体塩麹に浸して柔らかくしたあと、トマトと玉ねぎと一緒に炒め煮して、パセリの粉末をパラパラと振りかけて完成。あとはサラダを盛り付けて、ご飯をよそって、お湯を注いでインスタントのコーンポタージュスープを用意する。最後にグラスに麦茶を注いで配膳終了。
「夕飯出来たよ。」
「ありがとう。すぐ行く。」
明日の土曜日から次の水曜日までタクミと私は5連休だ。私たちの勤め先は明確なお盆休みはない代わりに夏季休暇を3日間取れることになっている。私はその3日間の休暇をタクミと同じ日にしたのだ。ただ単に休みを合わせただけで、世間的に夏休みの期間なので旅行するにも値段は高いし、出掛けた先でも混んでいるので、特にどこに行こうという計画は立てていなかった。
「マナ、急で申し訳ないんやけど、明日は俺の実家に一緒に行ってくれへんかな?」
「うん、私は何の問題もないけど、お義父さん・お義母さんにしたら明日私が急に行ったら気ぃ遣えへんかな?!あっ!行くんは良いけど、朝イチで手土産どっかで買わんと!」
「手土産は駅前の和菓子屋で買って行こか。」
「でもまた何でそんな急に塩谷家に行こうと思ったん?」
「俺が実家で会いたいのは兄さんやねん。」
「お義兄さん?今ご実家に居てはるん?」
「うん。兄さんの奥さんと子どもたちが子ども会のキャンプに参加している間、兄さんだけ実家に来てるらしい。」
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