7 あきらめない

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「不妊治療をやってる大阪府内の医療機関すべてに問い合わせるってこと?」 「大阪府内って言っても現実的に考えて通院できる範囲じゃないと治療を継続できひんから、実際は範囲はもっと狭まるやろうし、不妊治療を始める前にメール相談とか無料でオンラインカウンセリングとかしてるところもあるからそういうところから当たってみようと俺は思ってる。」 「分かった。私も調べて候補挙げてみるね。そう言えば南田レディースクリニックはどうしよっか?」 「あそこはもう来月俺が予約してる男性不妊外来で、セカンドオピニオンというか、曽根崎(そねざき)泌尿器科でもらった検査結果を見せたらMD-TESEできひんのは明らかやから、マナも検査項目が残ってても通院は終わりになるんちゃう?南田レディースクリニックはAIDには対応してなかったはずやからな。」 「私はあと8月後半で卵管造影検査が予約できたらほぼ検査は終わるんやけどさ。卵管造影って卵管の詰まりがないか、子宮の形に異常がないか診たりする検査で自然妊娠を目指すうえでは必要な検査らしいんやけど、ネットとかで見るとめっちゃ痛いらしいんよね。受けんとこうかな…」 「まぁ必要ない検査にわざわざ時間とお金をかける必要はないと思うけど…。でも人工授精するんやったら受けとく方が良いんちゃうん?」 「え、人工授精?」 「兄さんの精液所見に問題がなければ、持ち込んで人工授精でも対応できるかなと思ったんやけど。」 「そっか。人工授精の方が治療費も安いもんね。」 「回数を重ねることになったら体外受精にステップアップせなあかんかも知らんけどな。」 「治療方針もメール相談とか無料カウンセリングで聞いてみたら良いかもね。」 「うん。まぁ、それよりもまずは兄さんに協力してもらえるかどうかやけどな…。」 「ドロドロしたドラマみたいやけど、もしも遺産相続するような場面があったとして、私たちにお義兄さんの提供精子によって生まれた子どもがいたとしても、その子はあくまでもタクミと私の子どもやから、お義兄さんの家族の相続問題に私たちの子は一切関与しません、みたいな念書とか必要になるんじゃない?」 「あぁ…相続とかお金の問題は兄弟姉妹間でもシビアやって言うからな。兄さんに協力してもらえるように兄さん夫婦からの質問とか意見には誠心誠意全力で応えよう。」  親族間の提供精子での不妊治療が行われていないのは、やはり血縁関係がややこしくなるからだろう。相続・金銭問題以外で他にどんな弊害があるだろうか。  いとこ同士は恋愛も結婚も出来るけれど、もしお義兄さんの提供精子でできたタクミと私の子が、表向きはいとこであるお義兄さんのお子さんと恋愛関係に発展したとしたら、そこは何があっても断固として仲を引き裂かないといけない。  あとは何かないかな、と私は頭の中で想像力を働かせてみたけれど、結局、相続とか恋愛とかドラマみたいなことしか思い付かず、自分の発想力の陳腐さにひとり呆れていた。
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