12 採卵までのあれこれ

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12 採卵までのあれこれ

 初回は緊張と恐怖で手こずった自己注射だったが、その後は慣れたかと言うとまったく慣れず。あるときは下腹部に注射針を刺した際に角度が浅すぎて薬液を注入すると注射位置の近くがプクッと盛り上がった。またあるときは注射後に針の先端が誤って自分の指先に刺さってしまい「針刺しのインシデントや!」と某医療ドラマで見たことを思い出してひとりで大騒ぎした。(そもそも下腹も指も自分のものなので事故にならない。)  卵胞チェックのための通院の日は看護師が注射してくれるのでありがたかった。生理6日目の経膣超音波による内診で卵胞があまり育っていなかったのでHMG注射の量を増やしたが、今度は卵胞がいくつも育つと卵巣も大きく腫れてくるので、下腹部が張って痛むこともあった。  通常は生理8日目と10日目で卵胞チェックだが、10日目の10月30日が日曜日で診察がない日なので、8日目と10日目の卵胞チェックは間を取って9日目にすることになった。9日目で採卵に適した大きさまで育った卵胞がいくつあるかを診て、採卵日を確定するようだ。  10月29日土曜日、タクミはその日再びお義兄さんの精子を提供してもらうために早朝から出掛けていった。私も午前診で楢崎レディースクリニックに卵胞チェックに行くのでクリニックで合流して、午後は久々に天王寺をブラブラする予定だ。 「現状、卵巣内の卵胞は右で20mm以上が3つ、15mm以上が2つ、それ以下が3つ、左で20mm以上が2つ、15mm以上が5つ、それ以下が2つあります。採卵に適した大きさの目安は当院では20mm以上なので既に5つは採卵できる大きさですし、15mm以上の卵胞もあと数日あればもう少し成熟しますから、もう採卵日時を確定しましょう。予定どおり生理13日目の11月2日水曜日、時間は7時20分に来院してください。詳しい説明は後ほど看護師からさせていただきます。」  診察室を出て中待合室で看護師から呼ばれるのを待っている間に「ミッション完了!」とタクミからメッセージが来た。精子の提出と凍結保管の申請ができたということだろう。「お疲れさま!私は中待合で待機中。」と返信したところで看護師から呼ばれた。看護師に今日のHMG注射を打ってもらってから説明を受ける。 「当日来院していただいたら、エントランスの右手の奥にある門扉のインターフォンを押してください。氏名をおっしゃって頂いたら担当者が門扉のロックを解除します。お入りいただいたら窓口がありますので、担当者に診察券を提示してください。医療廃棄物と残った薬剤等はそこで回収しますので忘れずにお持ちください。その後は担当者の案内に従って手術着に着替えていただき、案内されるまでベッドで待機してください。塩谷さんの採卵時刻は7時50分なので、10月31日月曜日は19時50分頃にこちらのオビドレルという注射を自己注射してください。HMG注射とデュファストンの服薬はだいたいその1時間前までに済ませてください。採卵は全身麻酔で行いますので11月2日に日付が変わってからは絶飲絶食でお願いします。その他の注意事項はこちらの用紙をご覧ください。」
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