15 行く年来る年

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 ゴタついた繁忙期も終盤、大きなトラブルもなく無事に年を越せそうな気配だ。私の人事についても着々と動いているようで、会社としても不妊治療の通院のしやすさや自宅からの距離などをいろいろ考慮してくれている。私の不妊治療と訴訟のタイミングが重なったお陰で厚遇されているとも言える。  支店では一般事務という枠がない。住之江区にある本社直轄の後方支援室は一般事務という枠があるので配属されるとしたらそこだろうか。通勤は今より不便になるが仕方ないだろう。  12月28日水曜日、仕事納めの日がやって来た。本来業務が落ち着いているので私は年明けの庶務が楽になるよう準備をしている。私がここで過ごせるのもあと3ヵ月。引継書も作っていかないと。  タクミは終業後は飲み会かな?夕飯キャンセルのメッセージは昼休みの時点では入っていなかったけれど。まぁ先月ハラスメントの件で部署のメンバーのほとんどが懲戒処分を食らってるから飲み会って雰囲気でもないか…。  終業のベルが鳴った。部長に挨拶を終えた人からお互いに「来年もよろしくお願いいたします。」「良いお年を。」と口々に挨拶を交わして退社していく。  私も部長に「来年もよろしくお願いいたします。」と挨拶してから、沢田課長と山中係長に「不妊治療の件では大変お世話になりました。年明けからまた再開する予定です。来年もよろしくお願いいたします。」と深々と挨拶する。沢田課長には「通院のスケジュール分かったらまた前みたいに教えてな。引継ぎもあって大変やけど年明けからまたよろしく。」と言われ、山中係長には「繁忙期の間は治療休んだんやな。また俺らもバックアップできる限りのことするから頑張ってや!」と励ましてもらった。  佐藤くんには「私のせいで休暇を変わってもらったこともあったやんな。ごめんな。また年明けからもいろいろ負担かけることもあるけどよろしくお願いいたします。」と挨拶すると、「全然大丈夫ですよ。どうせ予定もないですし。僕の方こそよろしくお願いします。」と笑顔で返してくれた。私は周囲に恵まれたなぁとしみじみ思いながら、職場をあとにした。  そう言えばPのいない12月はとても心穏やかに過ごせたな。
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