15.5 桜庭家

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15.5 桜庭家

 私の実家は大阪府の河内長野(かわちながの)市というところにある。昔は積雪で玄関扉が開かず家から出られないことが度々あったような、山手に住んでいた。  私には6歳下に由衣(ゆい)という妹がいて、妹はまだ実家で暮らしている。由衣はなんばGardenという駅ビルのアパレルショップで働いており、1月2日はなんばGardenの初売りなのでたぶん出勤だから実家にはいないだろう。 「ただいまー!明けましておめでとう!」 「お義父さん、お義母さん、お邪魔します。明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。」 「タクミくん、明けましておめでとうございます。あ、うちは天井が低いのであちこち気を付けてくださいね。」 「久々で忘れてました。注意喚起ありがとうございます。」  リビングに入ると由衣がいた。 「お(ねえ)、タクミさん、明けましておめでとさんです。」 「あれ?由衣、()ったん?今日は初売りちゃうん?」 「せやで。昨日店休日やけど大掃除とか陳列とか仕事してきたら今日は休み!明日から暫く出勤やけどな。」  リビングにはもうひとり見知らぬ男性が立っていた。 「あの、はじめまして。白河(しらかわ)聡志(さとし)と申します。由衣さんと婚約させていただきまして、お義兄さん、お義姉さんにご挨拶を、と思いまして本日寄せていただきました。」 「あ、どうもはじめまして。由衣の姉の塩谷(しおや)茉奈(まな)です。こちらは夫の(たくみ)です。この度はわざわざご挨拶にお越しいただきありがとうございます。」 「由衣さん、聡志さん、婚約おめでとう。」 「タクミさん、ありがとう。タクミさんも身長高いけど、聡志くんも見てのとおりまぁまぁ身長高いんですよ。」 「タクミさんも、聡志さんも、うち天井が低いからあちこち頭上注意してくださいね。」 「お母さん、それしか言うことないんかい!」  新年早々、母にツッコむ姉妹であった。  そして一言も発していない無口な父であった。
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