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「みんなタラレバ話が好きやな。」
「ハラスメント被害を受けてた彼女は今どうしてるん?今の職場ではさすがに気まずすぎるやんね。」
「あぁ、有給休暇を消化して退職したみたい。」
「そっか。ずっと耐えたからやっと解放されたんか。まぁ原告団の一人やし忙しいんかな?民事訴訟なんてしたことないからよく分からんけど。」
「ところで、マナさん。オンライン診療の予約は何時になったんかな?」
「あ、ごめんごめん。1月28日土曜日の13時30分スタートの枠で予約取れてます。」
「了解。ありがとう。」
オンライン診療は凍結保管されている胚盤胞の説明と次のサイクルの方針についての意思確認がなされた。担当医師は以前の栗本先生と違って森という先生だ。
「現在、凍結保管させていただいている胚盤胞のグレードはそれぞれ4BB、4BC、3BBですね。胚盤胞っていうのは着床直前の受精卵の状態です。2つのアルファベットは細胞数の多さと言いますか、密度を表しています。前のアルファベットは胎児になる細胞数の密度を、後ろのアルファベットは胎盤になる細胞の密度を表していて、良い順にA→B→Cとなります。数字は胚盤胞の進み具合ですね。成長の早さとも言えますね。最も良好な状態の胚盤胞は5AAと表されます。胚盤胞を移植する際にはこのグレードを参考にして、なるべく良好なものを選んで移植していきます。確かに良好胚は着床しやすい状況にはなっていますが、良好胚だから必ず着床するわけでもないですし、染色体異常がないとも限らないので着床しても流産することもあります。だからグレードだけで一喜一憂する必要はありません。」
「はい。ありがとうございます。」
「塩谷さんは次のサイクルは移植になさいますか?」
「いえ、もう一度採卵でお願いしたいです。」
「採卵ですね。分かりました。ではまた薬剤等一式をお送りしますのでね。前回同様、同意書などは速やかに当院まで郵送してください。」
「はい、分かりました。」
「他に何かご不明な点はございますか?」
「あの、すみません。夫の塩谷巧と申します。」
「はい、ご主人。何かございましたか?」
「凍結保管していただいた精子の状態はいかがでしたか?」
「すみません。私の手元には奥さまのカルテしかなくて、それはお答えできかねます。先程お話させていただいた凍結保管中の胚盤胞含め、採卵したすべての卵子の状況については培養レポートというものがあるんですけれども、それといっしょに精液検査のレポートも同封してお送りしますからそちらをご確認いただければと思います。」
「分かりました。ありがとうございます。」
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