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「俺もネット記事とか見てたけど、不妊治療をきっかけに退職する女性が多いみたいやな。職場というか上司の理解がないとか、理由が理由だけに公表しにくいから急に休んだり早退するのを同僚から嫌がられたりして肩身が狭いんやな。」
「そりゃ私がするはずやった仕事を私が休むことによって誰かに負担させるわけやから、それが重なれば同僚に煙たがられても仕方ないわなぁ…。当日いきなり欠勤するわけちゃうからある程度段取りはつけられるけど、何度も何度も続いたらみんなイヤな顔するのも当然かも。」
私は同僚の顔を思い浮かべて溜息を吐いた。
圧倒的に男性社員の比率の高い私たち夫婦の勤める会社は、時代が令和になってもいろんな意味で昭和の社風が残っている。さすがにセクハラは目撃したことはないけれど、今のパワハラですよねーっていう場面はありふれた光景だったりする。パワハラ上司が部内のハラスメント講習の進行をするものだから可笑しくて仕方ない。日頃の自身のパワハラ振りをまったく自覚してないか、誰も訴えるわけがないと高を括っているのか。
タクミが心配そうな顔をして「マナの上司は不妊治療することについて理解してくれそう?」と尋ねてきた。
「無給の休暇ではあるけど、不妊治療を受けるための休暇制度ができたくらいやし、不妊治療を受けることについてとやかく言われることはないけど、でも理解があるかないかは別の話やと思う。」
「どういうこと?」
「当事者になった私ですら、不勉強やったせいで、生理周期によって検査項目が違うから何度も検査に通わなあかんって知らんかったし、タクミも知らんかったやろうし、当然不妊治療を経験したことがなければ上司も知るわけないから、頻繁に休まなあかん理由とか通院のスケジュールとかはある程度は明確にせんと理解は得られへんと思うんよ。」
「なるほどな。不妊治療を受けるから休暇を申請する頻度が増えますって上司に伝えただけやったら、その上司がどんな頻度を想定してるかわからんもんな。『なんでこんなに何度も休暇を取る必要があるんや?』みたいなことを都度言われたりするかも。」
「だからこそ最初の説明は重要やんね…。」
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