19 いざ新任地へ

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 4月3日月曜日、後方支援室への着任初日。後方支援室は支店の清掃や廃棄物処理、営繕工事などの業者の入札を行ったり、旅費や物品購入などの会計処理を行ったり、雇用保険や社会保険の業務を行ったりする部署だ。同一の担当者が同じ相手と長くやりとりが必要な件もあるので、場合によっては休暇を取るときに引継ぎが必要になることもあるが、基本的には係の中で誰もが同じ処理をするので比較的休暇は自由に取れる。ただあまりにもその係の中で休暇希望が固まりすぎると調整が必要になることもある。  私は後方支援室長と副室長に挨拶をして、ここでの業務の説明を受けた。ここはほとんどがパートさんで社員は各係に4人くらいだそうだ。それぞれ係のリーダーを主任が担当する。私は降職したのでリーダーではないが一応係の中での立場は社員なのでリーダー補佐のようなものらしい。ちなみに副室長は支店で言うところの係長、室長は課長クラスなのだそうだ。  私は会計処理の係に配属になったので、まずはマニュアルを読んだり先輩社員に教えてもらいながら仕事を覚えることからスタートだ。係の人の名前と顔も覚えなければ。会計処理は年度末の決算があるので、今はとにかくたくさん回ってくる会計伝票の処理が大変な時期だ。締切に間に合わなければあとで追加の修正報告が必要になる。正しい手順、正しい知識、正しい処理、納期厳守が重要だ。私はとにかく邪魔をしないように大人しくマニュアルを読んで着任初日を過ごした。  終業のチャイムが鳴った。1時間ほど前に残業確認を主任が行っていたが、会計処理の部署はパートさんもほとんどが残業するようだ。勤務時間管理については支店よりもここの方が厳格なようだ。私は業務を覚えていないので当然戦力外であり、残業せずに帰る。明日からはちゃんと力になれるようにマニュアル片手に頑張ろう。  タクミから部署の歓迎会で夕飯キャンセルの連絡が入っており、私はとりあえず自分が食べる惣菜だけを買って帰ろう。やはり着任初日の緊張感はものすごかったので非常に疲れた。タクミが帰ってくる前に眠ってしまうかもな。そんなことを考えながら不慣れな地下鉄に乗り込んだ。
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