20 新たな試み

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 今日のオンライン診療の担当医師は前回と同じ森先生のようだ。 「まずは3月8日に顕微受精した結果ですけれども、5日目胚盤胞でグレードが5AB、4BB、4BCの3つを凍結保管させていただいてますね。塩谷さん、胚盤胞のグレードの説明については前回させていただいたので省略してもよろしいですか?」 「はい、結構です。」 「では、今現在、6つの凍結胚がありますが、次のサイクルは移植にされますか?」 「あの、採卵と移植を同じサイクルでやりたいです。」 「採卵と移植を同じ周期(サイクル)で。分かりました。」  森先生はカメラを一度オフにした。再びカメラがオンになると森先生は手に何やら持っていた。 「こちらが今回塩谷さんに使っていただくお薬の1つです。点鼻薬でブセレリンと言います。生理初日から8時間ごとに1日3回、シュッとね、鼻から入れるお薬です。それともう何回も使ってもらってるHMG注射ね、これは今までどおり生理3日目から自己注射してください。そして生理6日目くらいに一度卵胞チェックの内診に来ていただいて、その後も2回くらい卵胞チェックに来ていただくと思います。生理13日目を目安に採卵します。移植するのは胚盤胞ですね?」 「はい。」 「胚盤胞は、採卵の5日後、生理18日目を目安に移植します。ただ周期(サイクル)に入る前にご理解いただきたいのが、卵胞をたくさん採るためにお薬を使って卵巣を刺激するわけですけども、その刺激が過剰になって、卵巣が腫れて腹水が溜まったり、血栓症を起こすこともあります。これが卵巣過剰刺激症候群(OHSS)です。卵巣が腫れた状態で胚移植すると、症状が悪化して入院が必要になったり、せっかく移植しても妊娠を継続できなくなりますので、医師の判断で採卵だけで中止することもあるので、ご了承ください。」 「はい。」 「卵巣が腫れていなければ、採卵後から黄体ホルモン補充を始めることになりますけど、それはまた卵胞チェックの最終日で担当医師か看護師が説明しますね。ところで塩谷さん、生理予定日近いですね?薬剤一式、宅配送付で間に合いますかね。」 「生理が来そうなのは2〜3日後なので、明日中に届けば受け取れると思うんですけど。月曜は出勤しているので受け取れるか分からないです。」 「塩谷さん、お住まいが…大阪府の堺市。このあと発送するので、明日には届きそうですね。明日、ご不在にする予定は?」 「特にないです。」 「では明日指定でお送りしますから受け取りお願いしますね。ご不明な点がなければこれで終わります。よろしいですか?」 「はい、ありがとうございました。」  接続が切れてオンライン診療が終わった。こうして私の不妊治療は再開した。
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