3 男性不妊外来

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3 男性不妊外来

 私の生理が来たのは、タクミとディナーを楽しんだ翌日、16日木曜日のことだった。今は12時40分。クリニックの午前診察は12時30分までだ。もう少し早くお手洗いに来ておけば電話連絡できたのに、なんて悔やんでも仕方ない。終業時刻が来たら取り敢えずクリニックに連絡して予約を取らなければ。  そこへタクミからメッセージが来た。 「マナごめん。たぶん俺のせいやわ。」 「タクミのせいって何?急にどうしたん?」 私もメッセージを返信したけれど、昼休みの終わりまでにタクミからの返信はなかった。  18時に鳴るチャイムが終業時刻を告げる。「お疲れさまでした。」「お先に失礼します。」と席を立っていくのは高齢再雇用のベテラン社員と契約社員だけだ。ほとんどの社員は自分の作業を続けている。  私はお手洗いに行くついでにクリニックに次の予約を取ろうと連絡を入れたが、懸念したとおり予約がいっぱいで来月の7月7日木曜日に別の検査をすることになった。基礎体温高温期の検査らしい。そのあとまた2週間後くらいに予約が取れなければ、本来であれば次回に検査するはずだった基礎体温低温期の検査はまた先延ばしになってしまう。このままでは検査の終わりが見えない。どうしたものか…。  昼間のタクミからのメッセージも気になっているが、忙しいのかタクミからの連絡はないままだった。こんなモヤモヤしたまま残業したって作業が進捗(しんちょく)しそうにないけれど、それでも進めなければならない仕事があるので私は自席に戻った。  明日には部長に説明しなければならない会議資料の内容について課長まで説明することが、私の本日の残業の目的だ。係長から修正指示されたところを修正し、了をもらって次は課長に説明する。課長が資料の内容を確認している間に、私は部下が作成した文書の内容を確認する。一応私は主任という役職に就いているので部下の指導・育成も仕事だ。 「佐藤くん、いつも言ってるけど誤字脱字多いから私に見せる前にちゃんと自分で確認しよう。朱書きしたところが誤字脱字やから。あと、ここの表現やけど………。」  課長は私が部下の佐藤くんへ修正指示を終えたのを見計らって「塩谷さん」と呼んだ。課長も係長も部下の動きをよく見てくれていて、本当に良い上司に恵まれた。どこかの理不尽なパワハラ上司とは大違いだ。  私が課長席に呼ばれたと同時に係長も課長席に来て、データに関する私の課長への説明と課長から私への修正指示を聞いている。自席に戻ると私への課長からの修正指示について、係長からレイアウトも変更して全体的に見せ方を変えようと提案された。  私は「かしこまりました。」とPowerPointとExcelを操作しながらもタクミのことを考えずにはいられなかった。
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