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24 甘くない現実 再び
妊娠判定の結果をクリニックに連絡し、次の通院の予約を取った。通院は7月29日土曜日11時だ。
私もタクミも浮かれていたけれど、妊娠はデリケートな問題だからまだ一番の協力者でもあるお義兄さんにも黙っておこう、とふたりで約束した。その判断は正しかった。
胚移植以来、久々の通院。あれからもずっと服薬と貼り薬と膣錠は続いている。
今日は久々にタクミも一緒に来院しているが、中待合へは女性しか入れないのでタクミをロビーの待合室に残して私だけ中待合に移動する。処置室から出てきた看護師から採尿カップを渡され、「塩谷さん、お名前間違いないですか?検尿お願いします。」と中待合のお手洗いに誘導される。
採尿したあと、中待合に戻ると、次は処置室に案内されて採血される。処置室から出ると内診室に案内されて経膣超音波で内診を受け、医師が「うーん…。」と唸る声を聞きながら、患者側にもある超音波のモニターを私も見ていたが、私にはその映像を見ても何が何やらよく分からなかった。内診を終えたあとすぐに診察室に呼ばれるかと思いきや、なかなか呼ばれなかった。
20分くらい待っただろうか。間に何人かあとの患者が先に呼ばれていた。私は嫌な予感がしていた。先に終わった検査の結果で何か問題があったに違いない。不安に駆られ始めていたタイミングで診察室に呼ばれた。緊張しながら診察室に入る。
「塩谷さん、妊娠判定は陽性だったとのことですが、子宮内に胎嚢が確認できませんでした。」
「え…?」
「尿検査の結果ではhCGの反応はありましたが、血液検査の結果を見るとhCG値は128(IU/L)と妊娠5週目前にしては低過ぎるんですね。」
「でも妊娠していないのであれば、そのhCGの反応はそもそも出ないものなんじゃないんですか?」
「生化学妊娠と言って、一旦は着床した胚盤胞のその後の発育が何らかの理由で進まず、死滅したのだと考えられます。自然妊娠であれば、おそらくは気付くことのないまま少し遅れて生理が来るだけのことなので、流産とも判定しません。しかし塩谷さんは一度妊娠しかかってはいるのでホルモン補充による移植サイクルは、8月については一旦お休みとなります。」
「そうなんですね…。」
「大変残念ではありますが、また9月の周期で頑張りましょう。近々遅れて生理が来ると思いますので、そのあとまた次のサイクルに向けたオンライン診療の予約をお取りください。」
「はい、分かりました。」
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