25 希望の光

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 カウンセリングルームを出た私は早速ワンクリノンの箱を開けて、1本取り出し、通勤カバンの中の化粧ポーチに入れた。あとは私が明日の14時30分を忘れないようにするだけだ。  今日は持ち帰りの薬が多いことを見越して、冷凍食品や半調理のおかずを昨日のうちにいろいろ買っておいた。帰宅したらそれらを活用して今日の夕飯を用意する予定だ。  夕飯の際にタクミに11月20日が移植日になったことと、次の妊娠判定が12月3日であることを報告すると、「そっかー。判定の頃にはもう繁忙期に入ってんやなー。」と呟いた。 「繁忙期かー。後方支援室にいると年度末年度始め以外は特に繁忙期じゃないらしいからすっかり忘れてるわ。」 「マナが降職の話をしたときはもったいないなと思ったんやけど。」 「あぁ、内命のあとに山中係長にも同じこと言われたわ。」 「でも実際、支店にいたら不妊治療に注力できる環境でもなかったし、マナも支店にいたときより健康的というか、後方支援室での生活リズムがマナに合ってるんかなって。」 「さすがにハラスメントで問題になったから、今はたぶん部署内は静かなんやろうけど、やっぱり毎日誰かが、と言うか自分もやけど、怒鳴られてる環境では精神的に良くなかったから今のほうが断然健康的なのは間違いないね。」 「次はアシステッドハッチングやるんやんな?」 「うん、もうオプション使い尽くしてしまうね。」 「祈るしかないけど、今度はうまくいくといいな。」 「うん。」  ふたりでがっちり手を握り合って胚移植がうまくいくことを願った。
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