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私が煮魚の惣菜などを買って帰宅した頃には21時を過ぎていた。タクミはまだ帰っていないようだ。残業してそのまま上司に捕まって飲みに行ったかな?でもそんな連絡も入っていない。私は食事より先にシャワーを浴びることにした。
私がスッキリしてダイニングに戻ると帰宅したばかりでまだスーツを着たままのタクミがいた。
「お帰り、タクミ。ごめん、先にシャワー浴びてた。急いで夕飯の準備するわ。」
「あぁ…ありがとう。」
夕食の配膳が終わる頃にスーツを脱いだタクミがダイニングに戻ってきた。今日の夕食はサラダ(スーパーのサラダパック)と鯖の味噌煮(スーパーの惣菜)、ゴーヤチャンプルー(スーパーの惣菜)、味噌汁(インスタント)そしてご飯(お米だけはちゃんと炊いた)だ。
「いつものことやけど惣菜ばっかりでごめんな。」
「いつものことやけどマナが謝ることなんて何もないよ。豪華過ぎるくらいや。」
「ありがと。じゃあ食べよっか!」
昼間のタクミからのメッセージのことが気になって、私は黙々と食事しながらもタクミが何か話してくれるのを待っていた。タクミの様子をチラチラと盗み見ていたら、不意にタクミとバチッと目が合ってしまい、私は気まずさから狼狽えてしまった。
「マナがずっと俺の様子をうかがってるんはちゃんと分かってるねん。『俺のせい』って送ったメッセージのことで気になってるんやんな?何も話さんとごめん。」
「わっ、私こそ探るようなことしてごめん。」
「いや、マナが謝ることなんて何もないよ。俺がヘタレなだけやねん。」
タクミは俯いて両手で顔を覆っていた。タクミが両手で顔を覆うのは悩んでいたり、困ったりしているときの癖なのだ。
「マナ、悪いけど今日は食器の片付けをお願いしても良い?俺もシャワー浴びて、風呂掃除も急いで終わらせるから、寝室で待ってて欲しい。ちゃんと説明するから…。」
「うん、分かった。待ってるわ。」
私がベッドに座りながらスマートフォンで不妊治療専門病院について調べていると、タクミが緊張した面持ちで寝室に入ってきた。
タクミが私の隣に座ってポツポツと話し出した。
「俺たちに今まで子どもができひんかったんは、たぶん俺に原因がある。水曜日に受けた精液検査の結果について、医師から説明があるから予約を取るようにって、今日クリニックから連絡があったわ。」
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