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27 守るべきもの
オフィスからクリニックまで、タクシーで約30分で到着した。地下鉄とあまり所要時間は変わらないのに乗車運賃は地下鉄の10倍以上した。
クリニックの受付で「さきほど連絡した塩谷です。」と診察券を渡す。もう午前の診察受付時間は私がタクシーに乗り込んだくらいで過ぎていたが、急患枠で診てもらえるようだ。中待合に通されて、検尿したあと、すぐに内診室に呼ばれた。検尿時出血は少しだけあったようだ。
「塩谷さん、エコー入りますね。力を抜いてください。」
いつもどおり声を掛けられて患者側のモニターを見詰める。赤ちゃんは…エコーモニターに映る白く光る生命はそこにちゃんといた!
「赤ちゃんは無事でしたね。それでは内診室を出られたらそのまま診察室にお入りください。」
内診室を出て診察室に入る。
「塩谷さん、ひとまずお腹の赤ちゃんは無事でしたね。最悪の事態は免れました。先程のエコーの画像ですけども、この部分が胎芽ですね。これが妊娠6週の胎児の成長のチェックポイントでした。そして胎児の後ろに見える黒い影のようなものが血腫です。絨毛膜下血腫と言います。これが出血を引き起こしています。このまま出血が続きますと胎児も出血と一緒に流れてしまうおそれがあります。ですので、血腫がなくなるまで当面は安静生活をしてください。」
「安静生活と言うのは?」
「こちらが安静生活の目安ですね。塩谷さんは安静度1〜2で良いでしょう。歩行はゆっくり行うとか、家事はなるべく控えるとか、重いものは持たないとか、外出はなるべく控えると言ったレベルです。こちらの用紙をお渡ししますので参考になさってください。まぁ、絶対安静とは違って最低限身の回りのことはできるといった感じですね。」
「仕事はほとんどデスクワークなのですが、どういう判断になりますか?通勤は徒歩と電車で片道1時間くらいなのですけど。」
「外出はなるべく控えていただきたいので通勤は不可です。お仕事を休まれるのに必要でしたら診断書をお出ししますがいかがいたしますか?」
「では診断書をお願いいたします。」
「はい、それではご用意いたしますのでね。次の予約はまた来週12月22日金曜日の11時00分でよろしいですか?」
「はい。」
「このあと看護師からお持ち帰りいただく薬の説明をさせていただきますので中待合でお待ちください。」
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