27 守るべきもの

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 職場への連絡も終わったし、もう13時半も回ってるし、ひとまず何か食べよう。今日の夜用に重くならないようにお惣菜も買って、各駅停車の電車で座って帰ろう。  私は天王寺駅の大きな改札の前にあるベーカリーカフェで軽食を摂り、同じく改札前の小さな惣菜屋で3種類ほどの惣菜を買って、のんびりと各駅停車で帰宅した。  21時前にタクミが帰宅した。私は昼間に買ってきた揚出し豆腐とポテトサラダと紫芋コロッケとインスタントのトマトカップスープにお湯を注いでかき混ぜ、雑穀ご飯を茶碗によそって夕飯の用意ができた。  私とタクミは「いただきます。」といつもどおり食事を始める。 「タクミさん、大事な話がありまして。」 「ん?!何?怖いんやけど!」 「実は私、今日の午前中職場で流産しそうになりまして、来週から休職することになりました。」 「え!流産?休職?」 「流産してへんから!しそうになっただけやから。」 「取り敢えず、赤ちゃんもマナも無事で良かったわ。で、何で休職?」 「今、子宮の中に絨毛膜下血腫って言うのができてて私は今日職場で出血してしまってね。次に出血したらもしかしたら血と一緒に胎児も出ていってしまうかもっていうことで、私はその血腫が治まるまで安静生活せんとあかんねん。これが安静生活の説明の紙やねんけど。」 「なるほどな。絶対安静やとトイレも自力で行くのはあかんけど、マナはそこまでの安静度が要求されるような深刻な状況は免れたわけや。家事はなるべく控える、外出もなるべく控える、ゆっくり歩く、重いものは持たない、と。」 「明日タクミも仕事休みやから当面の食材、レトルトとかインスタントとか冷凍食品とか一緒に買い物して運んでもらえませんかね?」 「マナはそもそも外出控えなあかんねんから、割高でもネットスーパーとか利用したらええねん。取り敢えず明日は俺が一人で買い物行ってくる。マナは俺を電話で遠隔操作してや。」 「分かった。ごめんな。」 「月曜から休みやからって家中の掃除するとかあかんで。家事もなるべく控えるって書いてるんやから。」 「はい。」 「マナのことやからベッドで寝てたらあれこれ気になって掃除とか始めそうやから釘刺しとかんとな。」 「はい。」 「俺の食事の用意とかもせんでええから。マナはマナと赤ちゃんのことだけを考えること!家の中で転んで出血とかありえるから、お風呂場とか特に気を付けや。」 「もう、分かってるって!ふふふ。タクミ過保護やな。」 「当然や。大事な奥さんと子どもやねんから。」  正面切って言われて思いっきり照れてしまった私だった。
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