あなたに会いたかった

28 安静生活

　私の安静生活が始まってから私はまったく家にこもりきりだったが、今日はクリニックに通院する日だ。ずっと家にいて、こっそりフローリングモップを掛けたりはするけれど、基本的にはベッドに寝転がって天井を眺めている生活をしていると曜日感覚が失われるのでエストラーナテープの貼り替え日を記入したカレンダーはとても重宝する。
　久々に外に出たらめちゃくちゃ寒く感じた。今日は12月22日、もうすぐクリスマスだから天王寺駅前のイルミネーションもさぞかしキレイなのだろう。生憎、今は昼間なので落葉してしまった樹木にLEDライトが巻き付けられただけの光景だ。
　クリニックに着くとロビーのクリスマスツリーも飾り付けられおり、ロビーがとても華やかな雰囲気になっていた。急に安静生活になってしまってすっかりタクミのクリスマスプレゼントを用意するのを忘れていた。ちょっと帰りに寄り道して【あべのミワタス】の百貨店のメンズフロアで何か良さげなものを探そう。

　中待合に呼ばれて採尿カップを受け取る。安静生活のお陰か先週の金曜日以来、出血はしていない。今日もおそらく大丈夫なはずだ。
　検尿を終えるとすぐに内診室に呼ばれた。血腫が小さくなっていますように。
「塩谷さん、エコー入りますね。力を抜いてください。」
　患者側のエコーモニターを見ると白く光る玉が脈打っているのが見えた。生命の躍動感そのものだ。
「塩谷さん、動いてるの見えますよね。これで心拍確認できました。」
「はい、ありがとうございます。」
「では内診室出ていただいて、そのまま診察室にお入りください。」
　内診室を出て、そういえば心拍確認に舞い上がって血腫を見るのを忘れていたことに気付く。まぁ先生が説明してくれるから良いだろう。私は診察に入った。
「はい、塩谷さん。先ほどもお伝えしましたけれども、胎児心拍も確認できて妊娠7週の確認ポイントはクリアできました。拍動が遅いと要注意なんですけど、塩谷さんの胎児心拍でしたら今のところ問題ないでしょう。」
「良かったです。」
「あと、血腫ですけど、先週から出血はされてないですか？尿に少し血は混ざっていたようですけどもね。」
「そうなんですか。自覚するような出血はなかったです。」
「そうですか。まだここに血腫がありますから、引き続き安静生活は続けてください。お薬も継続して出しておきますのであとで看護師から受け取ってください。」
「分かりました。」
「当院は来週12月29日金曜日から1月3日水曜日まで年末年始で休診しますので、塩谷さんは年明けは診察どうされますか？分娩予約とか取られました？」
「分娩予約はまだ出来ていなくて…」
分娩予約のことをすっかり忘れていて焦る私。
「分娩予約はお早めにお願いしますね。当院では最長12週前後の最初の妊婦健診までしか対応できませんからね。」
「はい、すみません。」