29 季節はめぐる

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29 季節はめぐる

 クリスマスイヴはふたりでブッシュ・ド・ノエルをがっついて、私はタクミに保湿クリームをプレゼントし、タクミは私に一粒パールのピンクゴールドのネックレスをプレゼントしてくれた。 「タクミさん、あの、プレゼントの単価が違いすぎるので非常に申し訳ないです。」 「いや、俺でも知ってるパールジュエリーのブランドのネックレスは全然手が出えへんくて、結婚指輪とか買った宝石卸の店で買ったからノンブランドになってしまったんやけど。」 「でも何でパール?」 「パールは安産のお守りでもあるって聞いたから。」 「そうなんや。ありがとう!」 「何かマナも俺のために高級なやつ用意してくれたみたいで…。」 「でも、ジュエリーと保湿クリームでは単価が違いすぎて全然釣り合ってないから。」 「シャイニーオーガニック?お、いい香りやん!ありがとう。大事に使わせてもらいます。」  こうして私たち夫婦のクリスマスイベントは終了していった。  クリスマスイベントも終わり、世間はもうお正月モードだ。花山病院で予定どおり8月9日の分娩予約もできて、保健センターで母子手帳ももらった。私の個人的な年越し準備はバッチリだ。年末の大掃除は私はほとんど出来なかったが高いところの掃除は身長の高いタクミが得意なのでタクミに任せた。  年末ギリギリに私が「急な連絡で申し訳ないけど、体調がすぐれないので正月は実家に帰れない。」と母にメッセージを送ると、「元気になったらおいでや。」と返信があった。続いて「由衣のハワイ挙式良かったよー。」とハワイで撮った挙式時の写真が送られてきたのには驚いた。新郎新婦を挟んで写っていたのは父と母と、おそらく新郎の白河家のご両親だろう。10月に入籍したことは由衣から聞いていたが、挙式のことは寝耳に水だった。まぁ旅費とか滞在費の関係で、それぞれの両親のみという最少限の招待客に絞ったということだろう。新郎新婦の眩しい笑顔とハワイの広く青い海と空がとてもステキな写真だった。  正月三が日は毎年恒例のそれぞれの実家への年始挨拶、百舌鳥八幡神社への初詣もすべてなしにして私の安静生活が続いた。  タクミがちょっと出掛けてくる、と家を出て40分程度で戻ってきた。タクミの手には何やら袋が2つある。 「お帰り。何か買ってきたん?」 「じゃん!やっぱり何か毎年恒例のことはしときたいなと思って鯛焼き買ってきた!あと【豆福】の正月の上用菓子売ってたから買ってきたで。」 「ありがとう!」 「鯛焼きまだちょっと温かいから今食べようや。」 「せやな!温かいものは温かい間に食べなな!」  たまにはこういうひたすら家にこもってウダウダする年末年始も良いかな、なんて思った私だった。
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