29 季節はめぐる

2/3
前へ
/91ページ
次へ
 1月5日金曜日、私は楢崎(ならさき)レディースクリニックに妊娠9週の健診にやって来た。年明けすぐの診察日ということで、本当に混み合っていた。私が内診室に呼ばれたのは12時前で、予約時刻からほぼ1時間押していた。 「塩谷さん、お待たせいたしました。エコー入りますね。力を抜いてください。」  私はいつもどおり患者側のモニターを眺めた。元気な拍動する生命体が見える。 「赤ちゃん元気ですね。はい、では内診室を出られたらそのまま診察室にお入りください。」  昨日まで動いていた鼓動がその翌日には止まっている、なんてこともあるほど妊娠中は本当に何が起こるか分からないので、久々の通院で胎児の無事を確認できたことが何より嬉しい。ほっとしながら内診室を出て診察室に入る。 「塩谷さん、妊娠9週に入りました。赤ちゃんも元気ですし、血腫もなくなりました。胎盤も形成され始めてますし、そろそろ安静生活は解除で良いでしょう。お勤め先に提出する診断書も用意しましょうね。診断書では1月15日月曜日から復職可能としておきます。」 「分かりました。ありがとうございます。」 「分娩予約は取られましたか?」 「はい。堺市の花山病院で分娩予約しました。」 「堺市の花山病院ですね。いつから転院されます?」 「こちらで妊娠12週の初期健診を受けてから転院しようと思っています。」 「分かりました。紹介状を用意しておきます。では花山病院の初診の予約もお忘れないようにお願いいたしますね。次の当院の予約はまた1週間後の1月12日金曜日11時でよろしいですか?」 「はい。大丈夫です。」 「では、復職に関する診断書は受付からお渡ししますので、ロビーでお待ちください。」 「ありがとうございます。」  こうして私は1月後半から復職。事情を知っているパートの青木さん、佐野主任は復職したばかりの私にとても気遣ってくださった。親切な方々が周りにいて何かとフォローしていただけるのはありがたい限りだ。  その後、1月26日に初期の妊婦健診を終えて、私は楢崎レディースクリニックから卒業。  花山病院に移ってからは妊婦健診は厚生労働省の定める基準のとおり通院を続けた。順調に赤ちゃんも育ち、私のお腹も妊婦らしく大きくなっていった。ありがたいことに私は悪阻(つわり)らしい症状も特になかったが、唯一、大豆の匂いや味を受け付けなくなり、好物だったきな粉が食べられなくなってしまったのが残念だった。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加