29 季節はめぐる

3/3
前へ
/91ページ
次へ
 NIPTや羊水検査は怖かったので、パートの青木さんが「娘が妊娠したときに受けに行ってたんよ」と薦めてくださった、胎児ドックという超音波による精密検査を受けに行って、「画像診断上の異常所見はなし」との診断にタクミと私は安堵した。  赤ちゃんの性別が女の子であることも判明し、タクミと私は名前の候補を考えながら盛り上がった。私は出産予定日が8月9日だから夏らしく明るい雰囲気の名前を付けたくて、【陽花(はるか)】とか【夏実(なつみ)】が良いと主張し、タクミは【咲希(さき)】とか【(けい)】とかニ音の名前が良いと主張した。ふたりで検討に検討を重ねた結果、折衷案で【実夏(みか)】と決めた。  妊娠26週のゴールデンウィークには塩谷家への妊娠の報告、お義兄さんへの妊娠の報告と協力してくださったお礼、桜庭家への妊娠の報告と産後はお世話になりたいというお願いなど、年始に動けなかった分、かなりアクティブに出掛けた。買ったばかりの新車で出掛ける案もあったが、ゴールデンウィークに車で出掛けて渋滞に巻き込まれるのも面倒だなということで結局いつもどおり電車で出掛けたのだった。  タクミが出勤しない土日はたまに映画を観に出かけたり、梅田のクラシカルホテルのアフタヌーンティーでお互いの誕生日(私は36歳、タクミは37歳になった)を祝ったり、夫婦ふたりだけの時間を思いっきり満喫した。  ちなみに私が妊娠30週に入った6月1日土曜日、ようやく難波のスカイホテルの【花舞(はなまい)】で、念願のオシャレな創作鉄板焼きをいただいた。目の前の鉄板でフランベによって上がる炎のパフォーマンスを見て楽しみ、熱を感じ、鉄板上で跳ねる脂の音を楽しみ、上品な味を楽しんだ。  私は妊娠34週を迎え、6月末から産前休暇に入った。タクミが休みの日に実夏(みか)を迎えるために必要なものを本格的に買い揃え始める。 ☆ベビー服 可愛くて つい買い過ぎる  マタニティーハイあるある川柳 詠み人:茉奈 「マナ、新生児期って基本的に外へ出えへんのちゃうん?季節的にも外は猛暑で危険やし。可愛いんは分かるけど、着る機会ないからそんなたくさん買わんとこ。外着より肌着買わなあかんのちゃう?汗かいたりオムツからウンチ漏れたりして着替えさせなあかんことも多いって言うで?」 「せやな。私の暴走を止めてくれてありがとう。」 案外、冷静なタクミだった。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加