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1 スタート
私は塩谷茉奈、34歳、会社員。社内の表彰式展で同じ役割のスタッフをしたことがきっかけで知り合った1年先輩の巧と結婚して5年目を迎えた。
共働きで生活費にゆとりがあるし、休日も夫婦ふたりで行きたいところに出掛けて、たまにリッチに外食したり、それなりに楽しく暮らしてはいるけれど…。私もタクミも子どもはほしいと思っていたし、私の数少ない特に親しい友だちはみんな「お母さん」になって、自分だけ取り残されたような気持ちが拭い切れなかった。
年齢を考えるといつまでも先延ばしにしても良いことはないので、タクミと話し合って取り敢えず2人で検査に行ってみることにした。
「レディースクリニックってたくさんあるんやな!口コミとか参考にするんが良いんかな?」
「うーん、でも通院しやすさを考えたら職場から一番近いこの南田レディースクリニックが良いんかな?不妊治療専門クリニックって言うのも良さ気。それにあんまし通院することは公表したくないから仕事が終わってから夜診で行くのが便利やと思うんよね。」
「せやな、じゃあ南田レディースクリニックに一緒に行ってみよっか。」
なんて、気軽に考えていた私たち夫婦はとても考えが甘かった。
「えぇっ?!初診予約が3ヵ月待ち?!」
「そうなんよ、驚いたわ。不妊に悩んでるご夫婦ってかなり多いんやね。それに最初はたくさん検査することがあるから午前しか予約できひんとか。それなら土曜日の午前診察がいいかなと思ってたんやけど、みんな考えることは同じやから激混みみたいでな。消化せんとあかん有給休暇を申請してる日でたまたま予約枠があったから私だけ行ってくるわ。」
「それが来月6月10日の金曜日か。俺は検査に行かんで良いの?」
「うん。とにかく検査項目が多いのは私で、夫の検査は私が初診のときに採精キットを受け取ってくるから、その採精キットで採精して私の2回目の通院で提出すれば良いんやって。」
「分かった。」
※作者が不妊治療を始めた当時は不妊治療は保険適用外の自費診療でした。ですので、このストーリー内での不妊治療は自費診療です。今は条件を満たせば不妊治療は保険適用なのでもっと混んでいるクリニックもあると思います。※
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