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「ここ……」
遊具のトンネルになっている所を見て、思い出してしまう。兄貴に泣かされた時とか嫌なことがあった時によくここに逃げ込んでいたけど、誰も探しに来ないからお腹が減ったら一人寂しく家に帰るのが大半だった。たけるくんと出会ってからも一度だけそこに逃げたことがあった。
そうしたらたけるくんだけがいっぱい探して、見つけてくれて、話を聞いてくれて、慰めてくれて、本当に俺にとってかけがえのない存在だった。
好き。大好き。ずっと。今も。
どうして一緒にいれなかった。
どうして四つも歳が離れていて、ずっと会えなくて、こんなに心の距離も遠いんだ。
会いたい、話したい、触れたい、触れられたい。
なんの理由がなくても、ただ一緒にいたい。
だから一番近い距離でいられる恋人になりたい。
もう憧れて見ているだけの存在じゃ嫌だ。
「こんな所にいた」
でもそれは、叶わない願いだと分かってる。
「……琉悟」
トンネルの入り口から琉悟が覗き込む。
「急にいなくなるなよ。心配する」
「……ほっといていい。琉悟は帰って」
「こんな所まで迎えに来てやったのに?」
「……悪いと思ってるから」
「悪いと思ってんなら二人で帰るぞ」
ここで見放さないでいてくれる琉悟は良い奴だ。俺を見つけてくれるし、心配もしてくれる。
同じはずなのにどうしてあの人じゃないとこんなに胸が苦しくなるのだろう。
そう思いながら帰路を歩いている時、後ろから勢いよく腕をつかまれた。
「……まだ、話終わってない」
少し息を切らしながら、そう言って現れたのは久郷だった。汗までかいて追いかけてきてくれたのかと思うと、余計に期待してしまう。
「誰?てか何の用ですか?」
「お前に用ねぇよ」
「傷つけておいて今更何の用があるんですか?」
琉悟が見るからに激怒している。
そんな姿は初めて見て、喧嘩になりそうな状況を止めるより先に動揺してしまう。
「美心。傷ついたから逃げたのか?」
琉悟の方に意識が持っていかれていた俺はいきなり痛いところを突かれ、うまく言葉が出てこなくて目を逸らしてしまう。
「まずは謝るのが先じゃないですか?」
「琉悟……もういいから。帰ろ」
「……天宮がそれでいいなら」
「……傷ついてないから。気にしなくていい」
二人に向けてそう言った後、琉悟の手を引いてその場を後にした。
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