奇行

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奇行

久郷の家のエアコンがついに壊れたらしい。 そして最悪なことに直るまでの間、天宮家に滞在するということが決まっていた。 俺の許可無く。 またあのクソ兄貴の勝手に家に人を泊める病気が発動している。それはもういいんだ、諦めてる。 でも、久郷だけは絶対に駄目だ。 冷静でいられなくなる。 ここ数日でもう問題が起きている。 俺は久郷の姿を見ると、なぜか暴走する。 朝、寝起きの久郷と遭遇した時は、急に現れたからかドキンとして驚いた反動で思いっきり足を踏んでしまい、素直に謝ることもできずに口論。 学校から帰宅しておかえりと言われた途端、なぜか動悸がして混乱してリュックを投げつけてしまい、また口論。 夜なんて一番問題だ。 湯上がりの久郷が上裸でうろちょろしていると謎に目のやり場に困る。それにソファで寝てしまった久郷の寝顔を目にすると、俺はなにを思ったのか、五分くらい無意識に遠くから観察している。 こんな訳の分からない奇行を多々してしまう。 ちゃんと知りたいと思っていたのに、全然冷静に関われない。久郷もきっとこんな俺には幻滅しているというか、普通にもう嫌いになられている気がする。 ただずっと悩んでいても、もうどうしようもないと鷹を括り、いつも通り朝四時に欠伸をしながら自分の弁当を作っていた。 すると、ドアが開く音がして目をそちらに向けると、眠そうな顔をした久郷が入ってきた。いつもは俺が家を出る八時くらいに起きてくるのに。 「……やっぱ起きるの早いな。いつも朝飯作ってんの?」 「……いや、これは。弁当」 「へー偉いな。食生活も兄貴とは大違い」 いつの間にそばに来て、俺が調理をしている所を見ながらそう言う。そんなに見られるとやりずらいと思ったのに、なぜか胸が温かくなる。 「……父さんも母さんも、仕事人間であんまり帰ってこないから、ご飯は自分で作るしかないだけ」 「美心は昔からしっかりしてるよな」 しっかりしてるなんて、誰からも言われたことない。だから久郷は、どこかおかしいと思う。 なのになんでこんなに嬉しいでいっぱいになる。 「まぁ。最近の行動は意味わかんねぇし、シンプルにむかつくけどな」 そう言われ、黙ったまま眉間に皺を寄せる。 ごもっともすぎて何も言えないからだ。 「弁当作るにしてもだいぶ早くね?」 「……関係ないだろ」 「起きんのきつくねぇの?」 「関係ないって」 「作った後勉強とかすんの?」 俺の反論を無視して質問攻めをしてくる。 だんだんと腹が立ってきた俺は、朝だということを忘れ、大声で言い放つ。 「あぁもうっうるさいうるさいうるさい!!!」 「……声でか」 そう言ってトイレに逃げ込んだ。 弁当作り終わってないのに、本当に困る。 料理を初めてもう結構経つのに、いまだにとんでもなく時間かかるから早く起きるとか、何もない日の朝は、三度寝くらいしないと起きないとか恥ずかしくて言えるわけない。 もう本当に弁当に関しては、ちゃんと眠気に抗って夜作るようにしないときつい。
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