4人が本棚に入れています
本棚に追加
「君言うこと全部素直に聞いてくれて可愛いねぇ」
なんかやけに身体触られる気がするけど勘違い?
後ろにいるから何しているか分からない。
息荒いくらいしか分からない。
もしかしてこれって危ない?やばい人だった?
どうしようと焦るばかりで、なにもできずにいると、聞き覚えのある声が聞こえる。
「こんな所で男子高生おかずにしてんじゃねぇよ」
すると、おじさんは焦った様子で逃げていった。その後ハッとして声がした方を向くと思った通り久郷だった。
「お前なにしてんの」
久郷は怖い顔をしてそう言った。
「最近俺の後つけてるのもなんだよ。ストーカーのくせに変態にセクハラされてんじゃねぇよ」
そう言われ、改めて危ない状況だったことに気づく。怒られて迷惑をかけたことを自覚すると、申し訳なくて涙が溢れてきた。
「ご、ごめ、俺、謝りたくて。ごめんなさい……」
「もう夜についてくるなよ。怪しい奴にもついてくんじゃねぇぞ」
「後つけないと、あえないんだもん……」
「あのさ。危なかったのちゃんと分かってんの?」
そんなことは分かっているけど、どうしても久郷のことを考えずにはいられない。そんな自分を抑えられなくて引くほど大量に涙を流しながら話す。
「久郷が。うち来ないからっ……だから俺」
「あーあーわかった。もう喋んなくていい。うざいから泣くな。ほら立て、俺の家行くぞ」
「なんで久郷の家」
「落ち着くまで家で休め。お前の家ちょっと遠いだろ」
言葉は刺々しいけど、やっぱりちゃんと優しい。
怒るのだって心配してくれたみたいだし、迷惑かけたい訳じゃないけど嬉しいと思ってしまう自分がいた。
「……立てない。手貸して」
「わがままだな。ほら」
俺より大きくてごつごつした手を掴むと、くすぐったい気持ちになる。立ってからもしばらく掴んだままでいたけど、久郷は何も反応しないから手を離した。どうしてすぐに離さなかったのか。
いや、もう分かっているかもしれない。
昔のままの変わらない優しさがあると実感して、ちょっとずつ。でも確実にまた好きになっている気がする。立ち止まって前を歩く久郷の後ろ姿を眺めていると、久郷は振り返った。
「どうした。どっか痛い?」
ぶんぶんと首を横に振り、駆け寄った。
その行動に懐かしさを覚えながら、久郷の家に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!