奇行

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「君言うこと全部素直に聞いてくれて可愛いねぇ」 なんかやけに身体触られる気がするけど勘違い? 後ろにいるから何しているか分からない。 息荒いくらいしか分からない。 もしかしてこれって危ない?やばい人だった? どうしようと焦るばかりで、なにもできずにいると、聞き覚えのある声が聞こえる。 「こんな所で男子高生おかずにしてんじゃねぇよ」 すると、おじさんは焦った様子で逃げていった。その後ハッとして声がした方を向くと思った通り久郷だった。 「お前なにしてんの」 久郷は怖い顔をしてそう言った。 「最近俺の後つけてるのもなんだよ。ストーカーのくせに変態にセクハラされてんじゃねぇよ」 そう言われ、改めて危ない状況だったことに気づく。怒られて迷惑をかけたことを自覚すると、申し訳なくて涙が溢れてきた。 「ご、ごめ、俺、謝りたくて。ごめんなさい……」 「もう夜についてくるなよ。怪しい奴にもついてくんじゃねぇぞ」 「後つけないと、あえないんだもん……」 「あのさ。危なかったのちゃんと分かってんの?」 そんなことは分かっているけど、どうしても久郷のことを考えずにはいられない。そんな自分を抑えられなくて引くほど大量に涙を流しながら話す。 「久郷が。うち来ないからっ……だから俺」 「あーあーわかった。もう喋んなくていい。うざいから泣くな。ほら立て、俺の家行くぞ」 「なんで久郷の家」 「落ち着くまで家で休め。お前の家ちょっと遠いだろ」 言葉は刺々しいけど、やっぱりちゃんと優しい。 怒るのだって心配してくれたみたいだし、迷惑かけたい訳じゃないけど嬉しいと思ってしまう自分がいた。 「……立てない。手貸して」 「わがままだな。ほら」 俺より大きくてごつごつした手を掴むと、くすぐったい気持ちになる。立ってからもしばらく掴んだままでいたけど、久郷は何も反応しないから手を離した。どうしてすぐに離さなかったのか。 いや、もう分かっているかもしれない。 昔のままの変わらない優しさがあると実感して、ちょっとずつ。でも確実にまた好きになっている気がする。立ち止まって前を歩く久郷の後ろ姿を眺めていると、久郷は振り返った。 「どうした。どっか痛い?」 ぶんぶんと首を横に振り、駆け寄った。 その行動に懐かしさを覚えながら、久郷の家に向かった。
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