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── 小学四年、10才のクリスマスイブ。
ケーキを持った親子連れの横を、僕はランドセルをリズミカルに鳴らし通り過ぎた。
玄関から駆け足で家に入ると、静まった部屋のテーブルには一枚の手紙。
──樹へ
ごめんね。今日も仕事で遅くなりそう。冷蔵庫に夕飯あるから温めて食べてね。
欲しがってたプレゼント届くからね!
メリークリスマス ママより──
冷蔵庫を開くと、一人では食べ切れない大きいケーキと、いつもより豪華なご飯がひとり分入っていた。
ふと、ママはどこでご飯を食べるのかな……と思ったけれど、いつも僕が眠ったころに帰って来るのでよくわからない。
窓辺のクリスマスツリーには色とりどりの装飾が施されている。
ツリーのライトが点滅しても、窓から差し込む夕日がそれを覆い隠す。
光ったって誰にも見えないのに。
「無意味だ。バカみたい……」
溜息をつくと、インターホンが鳴った。
「お届け物です。ねえ僕? お母さんいるかな?」
「ハンコならあります」
忙しそうな宅配便のお兄さんが差し出す紙に、ハンコを押し荷物を受け取る。
段ボールを開けると、そこには入手困難の話題のゲーム機と、人気のタイトルがいくつか並んでいた。
──欲しかったはずなのに、嬉しいはずなのに、駄々っ子みたいに癇癪を起こして地団駄を踏みたくなる。
遊ぶ気にもならなくて、とりあえずテレビを付けると、楽しそうな家族の映像がクリスマスソングとともに流れ出した。
目の奥がグッと熱くなって、僕はテレビの電源を切ると家を飛び出した。
公園に行けば、ひとりくらい暇な誰かがいるだろうと期待して。
しかし当ては外れ、いつもは奪い合うように遊具に群がる子ども達も、クリスマスは暇ではないのだろう。誰の姿も見えなかった。
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