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そして心境の変化は身体にもわかりやすく現れた。
──全く勃たないのだ。
いわゆる勃起不全というやつだ。
それまでは人並み程度にはそういうことに興味はあったし、年頃の男らしく処理することだってあった。
しかし、露出の多いグラビアを手にしても露骨な動画を見ても、心も身体も全く反応しない。
いや、反応はした。自分に欲望が湧くのを感じると、りっちゃんのことが頭をよぎるのだ。
自動的にあの頃彼女が受けたであろう行為を想像してしまう。
こんなもののために、あの世界一美しい笑顔は奪われた。
自分にも彼女を傷付けた男と同じ欲望がある。
悍ましくて、そんなこと認められなかった。
なんとかしたくて、好意を寄せてくれる女の子と付き合ってみたりもした。
けれど、何人相手が変わっても、色んな方法を試しても、身体も心も思うようにはいかなかった。
後悔と自己嫌悪だけが募り、八方塞がりだった。
このまま彼女に詫びながら汚い世界を生きていかなければいけない。
僕は絶望するしかなかった。
そんな時だった。
社会人になり、二年目の夏。
自分のデスクで仕事をしていると、部長から欠員補充の契約社員を紹介された。
リクルートスーツが全然馴染んでいないその新人は、今まで見た明るく元気な新人とは少し違っていた。
「佐伯莉子さん」
すぐに彼女だと気づいた。
しかし記憶の彼女とは別人過ぎて目を疑った。
それは姿形が成長で変わったからではない。
動揺を隠し、当たり障りなく挨拶を返すと彼女は僕に視線を向けた。
幸せを探していた澄み切った瞳は暗く陰り、僕に安らぎを与えてくれた控えめで優しい雰囲気は、刺々しく人を寄せ付けないものへ変わっていた。
──あんなにも祈った僕の願いは届かなかったことを悟った。
祈りすら無意味だなんて、ほとほと自分の使えなさに嫌気が差す。
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