1.僕と彼女の出会い

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   雪は降っていないけど、冬の匂いが鼻に刺さる寒い日だった。  葉の抜け落ちた桜の横のベンチで、僕は一人、どんよりと暗くなっていく空を眺めていた。  うちにはパパがいないから、ママはふたり分がんばっている。  ママはいつも疲れてクタクタだ。  だからワガママを言ってママを困らせるのはダメだ。  だけど……だけど……  さっきは我慢できた涙がポロポロと流れ落ちた……。 「……お兄ちゃんも泣いてるの?」  顔を上げると女の子が僕を不思議そうに見ていた。 「泣いてなんかいないよ!」  僕よりも年下の、小さなやせっぽっちの女の子。  そんな子にこんな姿を見られるなんて恥ずかしくって、かっこ悪くて、つい大きな声で嘘をついてしまった。 「……でも私とおそろい……ひとりぼっち」 「僕はひとりぼっちじゃない」 「──ひとりぼっちじゃないのに、ここに来てくれたの?」  パッと花が咲いたみたいに女の子の顔に笑みが広がる。  彼女は静かに僕の隣に座った。 「別に君のためじゃないよ……」  そっけなく言ってしまったけれど、なぜか悪い気はしなかった。   「今日はねクリスマスなんだって……ケーキを食べてプレゼントをもらえる日なんでしょう? お兄ちゃん、もうケーキ食べた?」 「……ケーキはまだ食べてない。プレゼントは……もらった」 「そっかぁ。私もね、ケーキ食べてないんだよ。プレゼントは……」  女の子は少しだけ考える素振りをしてから言葉を続ける。 「お家にいたらダメだから公園に来たんだけど、誰も居なくてガッカリしたの。だから……誰かここに来て下さいって──神様? サンタさん? にお願いしたんだよ……」  ふふっ……と喜びがこみ上がったように女の子は笑う。 「──私もプレゼントもらえちゃった……」  そうつぶやくと女の子は、何か素晴らしいものでも見るみたいに、キラキラした瞳で僕を見つめた。  
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