27.本当の再会

1/3
前へ
/78ページ
次へ

27.本当の再会

  「ごめんね樹くん……私ずっと思い出せなくて……」  背中を向けたまま先輩……樹くんは答える。 「いいんだ……。思い出して欲しかった訳じゃない。僕は……ずっと、りっちゃんに謝りたかった。ごめんね……君を守ってあげられなかった……。助けてあげられなかった……僕は君に何もしてあげられなかった……」  樹くんが小さく、すすり泣く声が聞こえる。  変わることなく、私にたくさんの優しさをくれた樹くんが、与えてくれるばかりの樹くんが、何もできなかったと泣いている。  自然に私の体は動いていた。 「──りっちゃん?」  樹くんの大きな背中に腕を回し、頬を寄せる。 「私、樹くんにいっぱい……いっぱい助けてもらっていたよ。あの頃がつらくて樹くんを忘れたわけじゃないの。……樹くんとの思い出が、私のたった一つの宝物だったから、私の中に置いておきたくなかった。それだけは綺麗なまま守りたかった。……だから私、樹くんを忘れたの。本当に私汚れているから……」  言い終わりもしないうちに突然、力強い両腕に包まれる。 「絶対汚れてない! ずっと……ずっとりっちゃんはきれいだよ! りっちゃんは僕にとって世界で一番きれいでかわいい、特別な女の子なんだよ!」 「…………」  温かくて厚い体に頬を寄せると樹くんの鼓動が響く。  胸いっぱいに彼の香りを吸い込む。  ──もう何もいらない。  このまま死んでしまってもいいくらい満たされている。    だけど、それを受け取る資格は私にはない……。  せめて私が感じた気持ちと同じ、いや、それ以上のものを樹くんにも返してあげたい。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加