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「樹くん本当は嫌だったのに、ずっと私に付き合ってくれたんだよね……」
「すごく恥ずかしかったけど、りっちゃんにされて嫌だったことは一つもないよ」
「本当? ……樹くんが言いたくても、言えなかったことはない?」
「…………髪に触りたかった」
「うん……触って」
樹くんは私の髪を束にして毛先まで指を滑らせる。
「変わってない。昔と同じだ」
「……他には?」
「抱きしめたかった」
「うん。もっとぎゅっとして」
回された腕に力が入り、樹くんが頬を寄せる。
「……甘くて可愛い匂いがする」
「あとは?」
「たくさんキスがしたかったんだ……」
「うん、たくさんして……」
私は瞼を閉じ、踵を上げて彼がキスをしやすいように背伸びをした。
優しく、優しく、そっと唇が合わさる。しばしの時間で一度離れ、愛おしさを滲ませて何度も唇を触れさせる。
私は欲張りになり、触れるだけではもどかしくなった。
「もっと……」
私が口に出すと、グッと後頭部と腰に手が回され、身動きが取れないくらい樹くんの腕の中に固定された。
樹くんが力強く私に唇を押し当てる。私も腕を回し、彼の全部を受け止められるよう口づけを返し、どんどんお互いの呼吸が荒くなる。
「本当はたくさん君に触れたかった……」
樹くんの望むことを何でも叶えてあげたい。
望むなら私があげられるもの全て彼に差し出したい。
「……触れたいところ全部、触って……」
「でも……」
「私の体も樹くんが触って嫌な所なんて一つもないよ」
樹くんと同じ言葉で気持ちを伝える。
その言葉を合図に口づけが再開した。
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