61人が本棚に入れています
本棚に追加
押されたのか、引いたのか、どちらから動き出したのか分からない。
お互いの舌を絡ませながら、ベッドに向かって私たちは足を進ませた。
ベッドになだれ込みキスを続ける。
私の舌を彼が吸い、彼の舌を私が吸う。甘噛をすれば、甘噛が返ってくる。
それはお互いを奪ったり与えたりしているみたいだった。
けれど官能的なキスにも関わらず、彼の手は私の体を弄ったりはしない。
樹くんの手はただ私という入れ物の形をなぞり、純粋に私の存在を確かめている。そんな動きだった。
どれだけ樹くんが私を大切に思っているか、傷つけまいとしているか伝わってきて愛しさと罪悪感に胸が詰まる。
「服を脱がせて……直接触って……」
唇が離れた合間に彼に懇願した。
「でも……君は本当は怖いのに……そんなことをしたら、自分を抑えられる自信がないよ。……だから僕はこれで十分なんだ」
樹くんは幸せそうに優しく微笑んだ。
しかし私の腰に当たっている存在は言葉とは裏腹に張り詰めた思いを主張していた。
「ううん……私が樹くんに触って欲しいの。抑えなくていいの……」
私が彼にあげられるのは、それくらいしかないんだから。
最初のコメントを投稿しよう!