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28.本当の私
緊張で指がこわばり、ブラウスのボタンがうまく外れない。
ぎこちない動きの私の手を、大きな手が包みこむ。
「僕が脱がせてもいい?」
静かに目を伏せて樹くんの申し出を受け入れる。
彼の長い指が、私のボタンに伸びていく。
恥ずかしさと緊張で顔を上げられない。
よく見ると、樹くんの指先はわずかに震え、何度もボタンを掴みそこねていた。
樹くんの表情に余裕はなく、耳まで赤くなっている。
緊張しているのは、私だけじゃない。
そんな彼が可愛くて、愛おしくてしょうがない。
気持ちが伝わるように、彼の目を見て手を握ると、樹くんははにかみ肩の力を抜いた。
背中に手が回り、ブラジャーの圧迫から開放される。
彼の手は魔法のように、あっという間に私を覆うものを取り除き、私の全部が露わになる。
覚悟を決めたはずなのに緊張で手足が固まる。
嫌なわけじゃない。
だけど恥ずかしすぎて、固く固くまぶたを閉じた。
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