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「もっと……して」
彼への思いが私の張り詰めた心を緩ませていく。
私の思いが伝わるように彼の手を握り返し、微笑みを作ろうとしたけれど、快感に負けて表情を作ることはできなかった。
ただ彼には何か伝わったみたいだ。
樹くんは口を離した。
「中も触るね……」
彼の指がゆっくりと奥に入っていく。いや、私が飲み込んでいるかもしれない。
舌では届かない場所も触れてほしかったから。
樹くんの指がゆっくり、出たり入ったりを繰り返し、私の入口が音を鳴らす。
昔、嫌悪しか感じなかったこの音が、今は彼に興奮を伝える手段に思える。
「いっぱい、いやらしい音が出てるね。 りっちゃんのここ、僕の指を食べてるみたい。もっと欲しいって動いてるよ」
吸い上げる高い音が響き、さっきとは違う場所から電撃のような快感が走る。
その場所を刺激されると、ビクビクと腰が跳ねて止まらない。
「指増やすよ……」
私の内側に、さらに強い快感が追加される。
頭が真っ白で何も考えられない。
聞いたこともない、大きくて、いやらしい粘着性の水音を私が、いや樹くんの指が響かせる。
「……どうしよう……おかしくなっちゃう……」
私の言葉が届いているのか怪しいくらい、樹くんの思考も正常に働いていないようだった。
「りっちゃん…………りっちゃん……」
うわ言のように私の名前を繰り返す。
口に蓋をされるように、樹くんの口に覆われ、樹くんの名前も喘ぎ声すら奪われる。
からめとられた舌のせいで最後の声も出せないまま、消えそうな、光の粒が弾けるような、経験したことのない未知の感覚に飲み込まれる。
樹くんの愛しさが溢れる眼差しに見つめられながら、私は落ちるような、昇るような例えようもない、初めての感覚を味わっていた。
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