WHITE ROOM

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WHITE ROOM

朝、目が覚めたら真っ白な部屋にいた。見渡すかぎりの白、白、白。壁や天井、家具から自分の寝ているベッド、着ている寝間着までもが漂白したような白で起きたばかりの私の頭の中が一瞬でパニックにおちいる。 昨夜寝た時はたしかに、自分の部屋だったのは覚えている。いつものようにラジオの深夜放送を聴きながら、好きな本を読みつつ眠りに落ちたはずだ。 「……やっとお目覚めになられましたね」 不意に耳元で低い声がして、私はびくっと体をこわばらせる。いつの間にそこにいたのかこれまた真っ白な長めの白衣とシャツ、ズボンと青白い顔の男がベッド脇の椅子に座ってこちらを見ていた。 「こ……ここは一体どこなんです⁈私はたしか、自分の部屋にいたはずで。それにあなた、誰なんですか?」 「まあまあ、落ち着いてください。ここは病院です。貴方、入院されたんですよ」 白衣の男はのんびりとした態度で答える。私が入院?そんなはずはない。この間受けた健康診断で異常はなかったはずだ。 「なぜ自分が入院なんてしたのかと思ってらっしゃるでしょう?まあとりあえずこれ、見てください」 そう言って白衣の男が私に手鏡を手渡してくる。手鏡を両手に持ち、自分の顔を映してあっ!となった。 「顔が…………ない」 目も鼻も口も、何もない。ただ真っ白な絵の具かペンキを一面に塗りたくったような自分の顔がそこにあった。手で触ってみてもつるつるした感触があるだけだ。 「これ……どういうことなんですか」 「うーん、それなんですけどね原因が分からないからこちらも非常に困ってるんですよ」 白衣の男はぽりぽりと、無精髭の生えた顎のあたりを片手でかく。 「そんな、あなた医者でしょう⁈なんとかならないんですか」 「……無茶言わないでください、治療の施しようがないんです。ともかく、方法が見つかるまで入院していただくのでそのつもりで」 ムッとした表情の白衣の男はそう言うと椅子から立ち上がり、ドアを開けて去っていってしまった。部屋に再び静かさが訪れる。 私は耐えられなくなって、ベッドのそばにあった真っ白な携帯ラジオのスイッチを入れるが雑音ばかりでどの局も入らなかった。
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