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フェリックスモテモテ
ああ♡やっぱり可愛い♡フェリきゅん殿下♡
王宮メイド長、マーガレット・エドワーズは、フェリックスに対し、結構本気で発情していたという。
王宮に住むメイド達は、元々英雄王陛下カッケーで集まっていたが、その約半分は、稀代のヤリチンアーサー・メリクリウスに持っていかれ、それでも残った半分は、フェリきゅんキャーな女達だった。
要するに、王様?何それ?つかフェリきゅん?キャー!だったことになる。
王宮において、英雄王ジョナサン・エルネストは、極めて人気がなかった。
まあそれはそれとして、今日も、昼食の時間は、フェリきゅんの胸キュンタイムの披露会になっていた。
「あのね?今日、フェリきゅんが、庭のヤドリギに手を伸ばしてたのよ?!2メートルくらいの高さの枝に、手を伸ばして!キャー!」
キャーキャー!って周囲に悲鳴が重なっていた。
「私なんか!棚の上の籠に手を伸ばそうとして、フェリきゅんが背後から、大丈夫?って言われたのよ?!キャー!」
「うなじは?!うなじは嗅がれたの?!」
「貴女達!」
マーガレットは、立ち上がって周囲を睨んでいた。
「フェリきゅんが匂いを嗅ぐうなじは、私のうなじなのよ?!」
2歳の時、マーガレットはフェリックスにうなじクンクンされたことがあった。
私?フェリきゅんと浮気?全然する!子供も旦那も捨てる気ある!
2児の母親は、とうにそう決意を表明していた。
メイド達が騒ぐ中、1人無言で、リーゼロッテはバケットサンドを齧っていた。
携帯を見つめながら。
携帯の待ち受け画面は、
ああ♡フェリきゅん♡
お尻をパンパンされた時の、トロメス顔の自撮り画像だった。
王宮のエントランスポートに集合した襲撃者達は、音もなく廊下を進んだ。
ここにいるのは、平和な時代にぼけ切った、無力な人間しかいない。
メイドの1人の、後姿が見えた。
素早く接近し、口を塞ぎ、鎖骨の間の急所に、ナイフを振り下ろした。
衝撃があった。ナイフの切っ先は、皮膚の直前で止まっていた。
ナイフを握った右手を、己が右手首で受け止めたメイドは、その右手首を捻ると同時に、その右手を振り抜くように、切って落とした。
息を吐く間もなく、襲撃者の1人は沈黙した。
「あら――皆様?襲撃ですか?」
やおら、両手にナイフを握ったメイドは、スカートを翻して襲いかかった。
何だ?何が起こった?エンリケは戦慄していた。
もう、殆ど手下は残っていない。
最後の手下は、今、メイド長らしき女と交戦中だった。
「皆様が何者か、どうでもようございます。リーゼロッテ様より培った、我が手管、どうぞご賞味ください」
雨霰のように降り注いだナイフが、最後の手下を沈黙させていた。
何だ?何なんだ?何故こうなった?
逃げるように廊下を進んだ先で、
「あ♡あ♡ん♡んん♡ん、んお♡」
「あー。エメちゃん♡アカデミーの王宮でしちゃって♡」
廊下の陰で、憎きアカデミー国王が、愛人を王宮に引っ張り込んでいた。
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