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人知れず排除
あああ♡で?お前は何だ?
英雄王、ジョナサン・エルネストは言った。
廊下では、精根尽き果てた愛人が、立ったまま絶頂の余韻に浸っていた。
「あれだ、珍しくエメちゃんがアカデミーに来てくれたってのに。空き教室でもよかったんだが、ここでエメちゃんに引っ張り込まれた」
――で?冷たい声で、王は言った。
「お前等――何か、うちのメイドに返り討ちにされてないか?あいつ等、リーゼロッテが1から鍛え上げた、優秀なコマンドの集団だぞ?お前等なんかが敵う訳ないだろうが。ってああ」
そう言って、憎き王が、銃をこちらに向けた。
「南の連中だな?まだ生き残ってたのか。あれだろ?フェルナンド兄弟の生き残りだろ?第二次侵攻作戦って訳か」
エンリケは、二の句が継げなかった。
指一本動かせなくなっている。
「あああ。何か魔王の奴が、まだ残党がいるって言ってたな?まあいい、リーゼロッテにもう手を出すなよ?あいつはお前等とはもう関係ない。さっさと消えれば、お前だけは生かしておいてやる。しおしおと王宮観光して消えろ」
言われて、大人しくエンリケは踵を返した。
くそ!くそ!くそ!エンリケは、激しい怒りを覚えていた。
子供のように睨まれ、子供のように追い返されたのか?この俺が!
しかし、英雄王の力は、俺ですら!
待ち伏せてやる!それで、隙を見せた瞬間、奴の命を刈ってやる!
エンリケは、誰も立ちはだかることのない、王宮の廊下を走って行った。
その時、携帯を握ったジョナサンは、
「ああタルカス俺だ。何か、変なのがうろついてるが、今元気な奴は排除しなくていいぞ?ああ多分、空き地の方に向かってるが、あそこに何があるのかな?」
殺す!殺す!殺してやる!ジョナサン・エルネスト!
もう視野狭窄したエンリケは、方角も見失い、果てのない王宮内を走り続けていた。
裏戸を乱暴に開いたところで、石畳でない、木漏れ日を感じていた。
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