夕日のアカデミー

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夕日のアカデミー

 そして、仮建築が済んだ家を出て、僕は学校に向かった。  何やら、学校ではミラルカが、変にいい気になっていた。 「ほらね!私のママが2番目よ!カノンはさっさと辞退した!ママ先生は仕方ないけど!2番目は私のママよ!プリムどう思う?!」 「やめなよミラルカ。お兄ちゃんが聞いたら、怒るよ?」  ああプリム叔母ちゃん、すっかりミラルカに取り込まれて。 「プリム叔母ちゃん」 「あ、フェリックスどうしたの?」 「うん。カノンちゃんは、どこに行ったのかな?」  仲のいい異母兄妹を探していた。  まあ、別にいいのよ?うちの人がエルフっぽくたって。  ただまあ、その辺確認しようと思って、糸会話で全員集合させたんだけど。  昨日は、アリエールのとこに泊まったのよね?  ロージー、ローゼリアが入学するかも、って話だったし。  あの子も、3歳なら、まあ入学資格あるもの。  だから、2人目妊娠してから、多分、うちの人としてたのよね?  私もそうだったし。あのエッチなワンちゃんは。  もう初期からしつこいくらいビューってされて。  ああ♡でも忘れられないもの♡ワンちゃんビューってされるの♡  やっぱり私――メスエルフみたいに。  そう思っていると、物凄いゴージャスなドレスを着た、伯爵令嬢がやってきたのが解った。 「あれ?カノンどこ行った?ああミラルカ!またカノンに意地悪したのか?!降りてこいお前は!」  逃げようとした娘に、問答無用で移動阻害かけて転ばせた、うちの人を発見した。  僕は、匂いでカノンちゃんを探した。  ああ多分、いつもの城壁にいる。  城壁に穿った秘密のしょんぼりスポットに向かった。  あれ?この匂いは、 「マリオン」 「フェリきゅん!」  僕に抱きつき、うなじをクンクンした、とても可愛い異母弟の匂いを嗅いだ。 「――え?マリオン?」 「ああ!フェリきゅんまでそう言うの?!」  イゾルテ・フレイア・エルネストおばちゃんの、マリオン・フレイア・エルネストは、純白のドレスを着ていた。  まあ、マリオンが物心ついた頃から、彼の性的嗜好に気付いてはいた。 「凄く、綺麗だよマリオン。立派な女の子になったね?」  かあっと赤くなったマリオンが俯いた。 「フェリックスの天然ジゴロ。――イジワル」 「うん、マリオン。カノンちゃんは?」  無言で指差した先に、膝を丸めたカノンが座っていた。  カノンちゃん。僕はそう呼んだ。 「フェリックス君」  カノンちゃん。僕と1番仲のいい、大好きな妹ちゃんだった。 「カノンちゃん、僕と、お父さんに打ち明けようと思っているんだ」 「邪魔ですか?なら、どこかに行きます」 「いや、君はここにいて?カノンちゃんの居場所は、カノンちゃんのものだよ。――は?」  その時、僕は空に、巨大な火球を見ていた。 「カノンちゃーん!」 「あれは――メル?」  エメルダおばちゃんの一人息子、メルヴィン・パストーリー・エルネストが、パピーロックに乗って旋回していた。  巨大小惑星アララギ落下事件。  世界に憎みを抱いた、テロリスト、マクシミリアン・デルピエールの、決死の攻撃は、いつものおばちゃん4人のジェリコの壁と、ユノおばちゃんの気、そして、それ以上の気の使い手、カノンちゃんによって、誰1人傷つくことなく解決していた。  僕は、ずっと僕を探していたリーゼロッテと夕陽のアカデミーの、オレンジに染まった空を、手を繋いで見つけていた。 「奇麗だねえ。リーゼロッテ」 「(わたくし)と、どちらが?何やら、賊が入り込んだようで」 「勿論、君だよ?リーゼロッテ?ああ、僕の、僕達の赤ちゃん♡」 「ええ、ジュン・ミロードの赤ちゃんですよ?」 「僕の子じゃない。だって、君がいないと、この子はこの世にいなかったんだから。僕達の子、でしょ?モン・シェリ♡」  この言葉使いは、南の大陸の土着言語だった。  その時、僕は、背後にお父さんの匂いを感じた。  何だろう。急に、トイレに行きたくなってしまった。  でも、キチンと打ち明ければ、きっとお父さんは聞いてくれる。  僕は、大体同じくらいの身長のお父さんと、ゆっくり向かい合った。 「お父さん」 「ん?どうしたフェリックス?お前もジェンダー問題で悩んでいるのか?」  マリオンみたいに。  お父さんは、変にとっぱずれたコメントを返していた。 了
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