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お姉ちゃん大好き
えええ?!フェリックスが赤ちゃん?!
突如現れた、僕のお姉ちゃん、クリステラ・エルネストが、僕とリーゼロッテのうなじをクンクンして、魔王の耳に噛みついていた。
「ああおめでとう!次は私達ね?!魔王?!」
「私の耳をガジガジしながら言うなあああああああああ!勇者の娘貴様!」
僕のお姉ちゃんは、魔王を凌ぐ魔法の天才児で、童貞魔王の赤ちゃんを生みたがっている、結構な変態だった。
「ふーん?それで、わざわざ来たの?」
「うん。だって、最近お母さんのおっぱい、飲んでないでしょう?」
「そういえば。ママのおっぱい飲みに。ハチオウジまで行ってきたのにね?」
ああそうらしかった。僕が生まれてすぐ、八王子に飛ばされたお母さんのそばには、わざわざお母さんのおっぱい飲みに来たお姉ちゃんがいたんだった。
「まあ、魔王覚えてる?フェリックス9歳でしょ?9歳で精通するケースだって、あるんじゃない?」
「それは!しょうもない小学生カップルのあるある話だ!大体貴様!職業暗殺者って、専用アビリティ複数持ちではないのか?!こんな9歳のガキに、簡単に孕ませられるな!」
「魔王、あえて申し上げます。複数アビリティすら通用しない、脅威の9歳児と子作りすることになったのですが。うちの坊ちゃまお舐めでない」
「まあ、魔王って、所詮童貞だしね?」
「貴様も黙っとけ勇者の娘あああああああああ!!それで!何をしに来た?!勇者のアグリーをもらって出直せ小僧が!」
「あー。フェリックス?パパの了承得てないでしょ?」
「――うん。お父さんには、まだ話してないよ?だって、リーゼロッテは」
「パパの妾って、王宮でブイブイいわしてたのよね?リーゼロッテ。でも、ごめん。フェリックスって」
「王女殿下、クリステラ様に申し上げます。最初は、半ば強引ではございましたが、今は、フェリックス・エルネスト、フェリきゅんの妻でございます」
うちの旦那舐めんな。リーゼロッテはそう言っていて、僕は、嬉しくて死にそうになった。
そして、僕はお姉ちゃんを知っていた。確かに、僕を弟呼ばわりしていたが、僕が真剣にリーゼロッテを愛していれば、僕の味方になってくれると信じていたからだ。
「ふーん。ごめん。可愛い弟だったもんで、ついからかっちゃった。あー♡ママの匂いプンプン♡」
近距離転移したお姉ちゃんが、リーゼロッテのうなじをクンクンして言った。
「命が宿れば、気で解るわよ?ユノお姉ちゃんとか、カノンちゃんなら気づいたでしょうね?アリアが出来た時、最初に気付いたの、ユノお姉ちゃんだったもの。ふうん、男の子――ね?パパが女の子比率高いの、何となく解るもん。ゴーマのおじさんと一緒で」
「ええいもういい!あんなおっぱい魔神のことは忘れろ!それで!何が望みだ?!エロ小僧?!」
あああ。多分、お姉ちゃんも解った。
ゴーマのおじさんだね?魔王が不機嫌になるのは 。
ゴーマのおじさんて、お父さんがアースワンで得た、別の親友だ。
僕は、まだ生まれたばかりの頃。うん。八王子に行ったあと、お姉ちゃんと、カノンちゃんと、アースワンのシホさん一家に、疎開したことがあった。
「ええ。魔王、学南協定において、学側の転移方陣は、混世魔王陛下に、一任するとあります。協定の、円滑な遵守を、学側は希望します」
「ほう?それで、どこを希望する?」
少し嬉しそうに、魔王が言った。
学南協定とか、知っている人間は、お父さんくらいしかいなかった。
時たま、魔王が、僕達アースツー人全員の、教員のように感じることがあった。
「学側の北東の外れ、城壁から80メートルの位置にある、空き地です」
「ただの空き地だぞ?王宮まで歩いて向かうと1時間はかかるぞ?ああ」
流石、魔王はすぐに気付いた。
「あの空き地に、僕達の家を建てようかと」
「大きな窓と小さなドア。という家しか建たんのだが」
「僕達夫婦が住むには、丁度いいと思って」
「ミロードには、まだお知らせしておりませんので、基礎までしか。しかし、私達が設計し、私達が建てる、細やかな家でございます」
「そうか。家の外にポートを立て、先は、貴様の親の近くでよいのか?」
「出来れば、王宮のエントランスポートで」
「まあいい。貴様の父親には散々面倒なリクエストを受けてきたしな。すぐにやっておいてやろう」
「ありがとうございます!やっぱり、優しい人だとは思ってました。ああそれで」
僕は、指を立て、鼻の前にかざした。
「これ、しばらく内緒にしといてくれます?」
馬鹿親父が、重なって見えた。
遺伝て、嫌なものだなホントに。魔王は思わず顔を引きつらせていた。
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