Sweet Pain : インスタントカメラの男

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 次の休みは予定こそなかったが、ただいつもみたく寝て過ごしたかった。  が、職場の先輩社員に誘われて、入社して一年目の僕は否応なく出ていくはめになった。  二十代半ばまでの者同士男女六人ほどでバーベキューをやるのだという。僕は屋外で長時間過ごすのが苦手だった。  泥や汗にまみれ虫に刺されながら、先輩らに気を遣いながら大味な料理を食べるなんて想像したら寒気しかしなかった。  僕も他の皆と同じく楽しませたいというよりは、せいぜい使いっ走り要員で呼ばれたのだろう。  道具類、食材類はバーベキュー好きの他部署の先輩社員らがそろえたが、現地に着いてからジュースや氷、ごみ袋、割りばし、その他買いそこねたものの調達を頼まれた。  そのためにせっかく登ってきた山を僕だけが一人、下りていくことになった。  いかにも段取りが悪いが、こういうときのための僕だ。予想通りである。
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