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初めは聞こえていないふりをして、足を止めなかった。
だいたい坊主呼ばわりするのは昭和的に過ぎ、しかも子ども扱いしすぎで、僕は内心憤然としていた。
「おい、聞こえないのか、坊主!」
今度は強く言ってきたので、さすがにぶん殴られるのは勘弁とばかりに、僕はついと男に顔を向けた。
「僕のことですか」
「ったりめえだろ。ここには坊主っきゃお前しかいねえだろ?」
そういって男は手招きしたが、酒やタバコのきつい匂いがしそうで、僕はなお遠巻きにしていた。
「ったくよう」そうぶつぶつ言いながら、男は脇に置いてある十センチ四方の黒いものを取り上げた。「いいかー、こっち向けよー」
僕は渋々、顔を向けた。すると、瞬間白く光った。
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