Sweet Pain : インスタントカメラの男

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 僕の何を知っていて、そんなことを言うのだろう。  それでも、口をついて出た。「わかってますよ、それぐらい」  はっとした。  そのような胸の奥で常日頃隠し持っていた思いを、今日初めて会ったばかりのよく知らない男にぶちまけたことに、我ながら驚いてしまった。   重たい荷物を両手いっぱいの体でようやく到着すると、すでに先輩たちはカップル同士に分かれてすっかり盛り上がっていた。  そして、やはり男の素性を訊かれたが、正直に答えた。  男が皆にカメラを向けてシャッターを切り始めたが、先輩らは特に気に留めないようだった。  むしろ出来上がったカップルでのツーショット写真を受け取っては、はしゃいでいるようだった。
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