告白の代償

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 私は動揺していた。それは眼前の光景に驚かされたことに起因している。 「好きです。付き合ってください」  確かに目の前の人はそう言った。どうしたらいいのだろうか。  幼馴染として長い間苦楽を共にしたのは間違いないが、そういった感情は今まで持ち合わせていなかった。  私は混乱した。どうしてこうなったのか。 「いつから?」  私はそう問うた。その人はこう答えた。 「昔から。会った時から」  私はますます混乱する。最初から認識がそもそもズレていたというのか。 「駄目?」  悲しそうな瞳でその人はそう言う。返答に困る私から拒絶の意を感じ取ったのだろう。 このまま断れば今までの関係は崩れるだろう。だが、受け入れても結局それは崩れてしまうかもしれない。 私の頭は沸騰し、思考がショート寸前だ。もう友人として生きていくことはできそうにない。でも失いたくない。ならば……。  私は黙ってその人の手を取って、真っ赤な顔のまま強く握った。  その日私は友人を失い、恋人を手に入れたのだった。 完
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